「すごくいいと思う!」がんでわが子を失った母たちが出会い“理想のこどもホスピス”作りが始まった
画像を見る 1歳の誕生日を祝われる夕青くん。病気がなければ7歳を迎えるはずだった

 

■「かえろうか」とあの子が願った部屋で

 

千尋さんはいま夕青くんが「かえろうか」と言った鯖江の家の和室で暮らす。夕青くんは、この3月19日で7歳になるはずだった。昨春の小学校入学に合わせて千尋さんはふでばこと鉛筆を買い求め、窓辺に設置した祭壇に飾っている。

 

「鉛筆を1本削ってみたり。ランドセルも買ってみたかったなぁ」

 

千尋さんは毎晩、夕青くんに本の読み聞かせをしているという。

 

「今日はこんなことがあったよ、という報告と。1日1話ですから、読み聞かせの本も随分増えました」

 

通常の男児より言葉も早かった夕青くんだから、7歳であれば親子の会話も弾んでいたことだろうと千尋さんは想像する。

 

「私が食欲をなくしていると、『ママ食べて』と、口元にパンを持ってきてくれたり。あの年で親に対する気遣いもできていました」

 

長時間におよぶインタビューで、すでに日は傾き、明かりのついていない部屋は薄暗くなりつつあった。千尋さんは言葉を続けた。

 

「親バカですが、私はそんな夕青のこと尊敬しているんです」

 

千尋さんがほほ笑んだ瞬間、部屋の照明がパッと自然にともった。誰もスイッチには触っていないのに!

 

「夕青くんががんばっているママにエールを送ってくれているのかも」

 

記者がそう言うと千尋さんがうれしそうにうなずいた。

 

(取材・文:本荘そのこ)

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