■命にかかわる薬が不足する可能性が
こうした理由から、今回の決定には現場の医師たちからも反対の声が上がっている。神奈川県保険医協会副理事長で医師の湯浅章平さん(章平クリニック・院長)は、こう懸念を示す。
「今回の決定は、本来の保険外療養費制度の枠組みからの逸脱を意味しており、現場サイドの医師としては容認できるものではありません」
今回は、課される負担は25%だが、さらに医療費を削減したい厚労省は、この負担率を今後引き上げていくのではないかという見方もあるという。加えて、医薬品の供給不足も大きな懸念材料だ。
「2020年以降、ジェネリック医薬品メーカーの不正が相次いで発覚しました。これにコロナ禍も重なって、慢性的な医薬品不足が続いています。まずは、医薬品の供給不足の問題をクリアすることが先決と考えます」(湯浅さん)
前出の山根さんも、「患者の命取りになりかねない」と語る。
「たとえば、慢性心不全の患者が服用するメインテートという薬は、先発薬の供給が多いため、よく使用されています。今後、メーカーは先発薬の製造を絞ってくるでしょうから、10月に向けて後発薬の供給量を増やさねばなりませんが、どこまで追いつくのか……。もし、どちらも不足することになれば、薬不足による死者が出てしまいかねません」
医療費削減を断行することで、危険にさらされるのは私たち国民なのだ。
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