■積み立てによる複利で老後資金の寿命を延ばす
物価の上昇を考えず、「財政検証」で示された金額をうのみにして老後に備えても、途中で老後資金が尽き、極貧生活に陥ってしまう可能性が高いのだ。それを防ぐために、今からの準備が必要というのは、生活経済ジャーナリストの柏木理佳さんだ。
「まず大切なのは、可能な限り働いていることです」
時給が高い仕事を得るため、役に立つのが資格だ。そのため、1万6000講座を対象とした厚労省の教育訓練給付制度を利用するのも選択肢だ。
「厚生年金の加入対象者が拡大している現在、将来貰える厚生年金を増やすことも念頭に入れましょう。 たとえば月収13万円で15年間働けば、年に約13万9千円の厚生年金が生涯にわたって貰えます。ただし、労使折半の場合、月1万2千261円、15年間で約220万円の保険料を支払わなくてはなりません」(以下、柏木さん)
働いて得たお金は貯蓄か投資に回そう。物価が上昇する中で人気なのは積み立てNISAだ。
「投資信託では元本は保証されませんが、積み立てによる複利は魅力。たとえば毎月3万円、年利3%で15年間積み立てれば、元金540万円が678万円に増えます」
夫婦で65歳までに2千万円貯め、3%の利回りで運用できれば、前述の赤字の心配はない。
「2千万円の貯金を月8万円ずつ取り崩す場合、86歳で底をつきますが、3%の利回りがあれば、貯蓄がなくなるのは98歳まで延長できます」
もちろん、細かい節約も必要だ。
「家計簿アプリで無駄遣いを管理し、チラシアプリを利用して同じものでも安い店で買うこと。固定費の削減も大前提です。格安スマホに切り替えたり、保険を見直したりしましょう。住宅ローンは、老後までに払い終えるように計画してください」
老後に本当に不足する額がわかったところで、老後にしっかり備えよう。