「残される家族に命のバトンを繋ぐ」日本初の“看取り士”が語る「死」との向き合い方
画像を見る 「自分が生きているうちに、看取り学をもっと広めたい。目指すは看取り士を3万人にすることです」(撮影:前川正明)

 

■すべての人に“尊厳ある死”を。自らも、後悔なく命のバトンを繋ぎたい

 

昨年12月、看取りの提言と普及が認められ、日本看取り士会は教育・文化・医療・環境・地域開発などの分野において地球倫理の推進に貢献した団体を表彰する「第28回地球倫理推進賞(国内活動部門)」を受賞した。

 

柴田さんが、離島で看取り士を始めてから23年、今や仲間が全国に増え、看取り学は海外にまで広がっている。

 

「看取り士の派遣は、一人でも多くの人が、望む場所で安らかな最期を迎えるための社会の一助となると考えています。さらにいえば、日本人が古から死を家族で見送ってきたように、看取り士がいなくても、家族や周りが看取っていける文化を創りたい。そのためにも活動を続けていきます」

 

これまで多くの人を看取ってきた柴田さんも、あと少しで後期高齢者だ。自身の最期についてはどのように考えているのだろうか。

 

「娘と話し合い、5年かけてエンディングノートを書きました。荷物についても、『整理をしたほうがいい。この本棚に入るだけにして』などと諭されて、この間は本を大量に処分しました(笑)」

 

娘にはよく活を入れられるのだと、柴田さんはうれしそうに笑う。

 

「昨年、看取り仲間が住職を務める寺に、日本看取り士会と自分の墓も建て、娘と孫と見に行きました。私にもいずれそのときが訪れます。母として、娘や孫に『命のバトン』をきちんと渡したいと思っています」

 

現在、全国の看取り士へ寄せられる依頼数は年間500件を超える。

 

誰もが安心して望ましい最期を迎えられる社会へ。柴田さんは今日も、誰かの命のバトンを?ぐために奔走する。

 

(取材・文:川村一代)

 

画像ページ >【写真あり】「ありがとう」の言葉とともに温かい愛をくれる高齢者を、柴田さんは「幸齢者さん」と呼んでいる(他2枚)

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