「物静かな女性が豹変、胸ぐらをつかまれ…」日本唯一のエクソシストが明かす“悪魔払い”の壮絶現場
画像を見る バチカンから正式に認められた日本で唯一のエクソシスト・田中昇さん(撮影:五十川満)

 

日本唯一のエクソシストとして、また教会の婚姻裁判にも多く関わるなかで知ったことがある。

 

「実に多くの方が過去も現在も人間関係や性暴力、パワハラ、DVなどに苦しみ、生きる気力を失っています。人間は、言葉一つで死んでしまうほど弱いもの。

 

それを見捨てず、自分自身の力で病や問題と向き合えるところまで手を貸し引き上げてあげる。その突破口の一つがエクソシズムであればいい、そう思っています」

 

30代男性と事務職の女性のそれぞれの両親から、後日、「おかげさまで落ち着いた日々を家族で過ごしております」という文面の手紙が届いたという。

 

「ですが、それで“よかった”で終わりではなく、また求められれば悪魔払いではなくても、相談には乗っていきたいし、気遣いは続きます。それはエクソシストというより一司祭、一人の人間としての私の思いなんです」

 

1月25日朝9時。

 

「人間とは困ったことに、暗闇のほうを向きがち。戦争も常に起きてしまいます。大事なのは、私たちが謙遜や心の清らかさを持ち続けることなのです」

 

日曜のミサで、120人ほどの信者を前に説教を行う田中神父の姿があった。3年前にカトリック豊島教会に赴任し、ふだんは教会の背後に立つ司祭館で暮らす。後日、再訪すると、食材の入ったスーパーの袋を抱えて帰宅したところだった。

 

「一人暮らしですから、自分で買い物して料理もします。実は自炊は、司祭の修行をするときに真っ先に指導司祭から教わったこと。また私たちの収入は、所属する教区法人から基本給が支払われます。ふだんの生活は、朝晩のミサの間に、教会の事務仕事をしたり、聖書や教理を教えたり、大学で教えたりです。教会のこども食堂の活動を手伝うこともあります」

 

昨年2月、著書『エクソシストは語る』(集英社インターナショナル)の出版後には、一時教会に電話が殺到し、通常業務に支障も。

 

「ご相談のある方は、まずはご自分の近くの教会にお問い合わせください。私自身、教区の許可がないと動けない立場なのです」

 

それでも田中神父が外への発言を続けるのは、現代の教会の在り方に強い危惧を抱いているからだ。

 

「今年は、上智大学で教え始めて10年という節目の年でもあり、次の世代を担う学生を送り出している自負もあります。ですが、それ以前に神学生の志望者は絶対的に少ないという現実があります。それは教会が若い人に魅力的な場所ではなくなっているから、洗礼式やミサ、結婚式や葬儀をやっていればいいという組織になってしまっているからではないでしょうか。

 

ますます生きづらい世の中になるなか、教会の務めそのものを見直す時期にきているのではないかと思います。もっと人々のために希望を見いだす役割があるはず。まさにいま、AIEと教皇庁の間でエクソシズムの儀式書の改定が行われていますが、教会が本来あるべき姿を、ある意味で悪魔払いは示していると思うんです」

 

救いを求める弱者と伴走し、ときに人の心に巣くう闇と闘いながら、田中神父の祈りの日々は続く。

 

(取材・文:堀ノ内雅一)

 

画像ページ >【写真あり】ストール、儀式書、十字架、聖書、聖水入れ…「エクソシズム」の儀式で使用する道具(他3枚)

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