宇城市小川防災拠点センターの避難者。雑魚寝の状態が続く(撮影:梅基展央) 画像を見る

7月28日、熊本県で3度目の最大震度7の地震が発生。大きな被害が出ている。

 

県の災害対策本部会議によると、8月1日時点で36人が死亡。住宅の被害は1500棟以上で、9228人が避難所に身を寄せている。また、7万2000戸で断水が続いている。停電は全戸が回復したが、各家への引き込み線の破断で、明かりがつかない家も少なくない。

 

そんな被災地を追い打ちのように襲っているのが、「猛暑」だ。

 

熊本市は7月19日から30日まで、12日連続で最高気温が35℃を超える「猛暑日」。最低気温が25℃以上の「熱帯夜」も7月11日から続いている。

 

「地震災害に加えて、体温よりも高い猛暑はもはや熱波災害で、すでに『複合災害』が発生している状況と言っていいでしょう」

 

そう語るのは、都市防災の専門家で東京都立大学名誉教授の中林一樹氏だ。

 

複合災害とは「同時又は連続して2以上の災害が発生し、それらの影響が複合化することにより、被害が深刻化し、災害応急対応が困難になる事象」(内閣府・防災業務計画より)のことだ。

 

被災者にとっては地震で停電、断水の中での猛暑で、熱中症のリスクが高くなっている。その対応で、行政では人手が不足していく。

 

ここでさらなる懸念がある。「台風」だ。8月1日現在、太平洋上では猛烈な勢力の台風13号が発生しており、今後日本に接近する可能性がある。

 

「もし台風が九州を襲うようなことがあれば、トリプルの複合災害ということになり、さらに被害が拡大し、対応人員が不足し、自体がさらに深刻になる恐れがあります。屋根の瓦がずれた家も多いでしょうから、早めにブルーシートを掛けロープで固定するなどの暴風・雨漏り対策が不可欠です」(中林氏、以下同)

 

過去の地震でも複合災害はしばしば発生しているという。

 

「2004年の新潟中越地震は、その3日ほど前の台風による大雨で地盤の強度が下がり、震度7の揺れで地滑りやがけ崩れが多数発生しました。またその冬は10年ぶりの豪雪になり、地震では軽微な被害であった多くの家が積雪で潰れるなど被害が拡大しました。2024年1月の能登半島地震では、9月の豪雨により約220戸もの仮設住宅が床上浸水し、被災者がまた避難所に戻る事態となりました。

 

日本はよく『災害が多い国』だと言いますが、今や『災害がずっと続いている国』だと言った方がいいでしょう。大きな災害が起きて、その復旧・復興ができないうちに、また次の災害が起きてしまう。それが複合災害なのですから」

 

中林氏が大きな危機感を持っているのが、首都直下地震とともに、今後30年以内で60〜90%以上の確率で発生するとされる「南海トラフ地震」だ。

 

「首都圏から宮崎県まで、太平洋側の広い範囲で甚大な被害が出ると想定されています。がれきの処理なども長い時間が必要ですし、仮設住宅の建設にも時間がかかる上に4,5年以上も生活せざるを得ない人が多数出てくるでしょう。その間に、西日本の太平洋岸に1つの台風も来ないとは考えられません。そもそも海沿いは地震と津波が複合化しているのですが、内陸でも洪水ハザードマップの浸水想定区域に仮設住宅を作れば床上浸水し、複合災害となりかねません。実際、能登半島地震では起きたのですから」

 

そのような被害を減らすためには、どうすればいいのだろうか。

 

「1つの災害にだけ対処するのではなく、まずは複眼防災、その地域に存在している全てのハザードを評価する『マルチハザード』の意識を持つこと。例えば家を建てる際には、建物の耐震化対策だけではなく、その敷地は水害の可能性があるかということも考えなくてはいけません。もちろん、行政もそれらを踏まえた防災情報の提供や、水害対策などによる工事費増大への補助や助成など支援体制を作ることが必要です。

 

そして被災後防災。例えば地震で被災した後でも、次の災害を考えて仮設住宅を安全な場所に建設するなどして、被災後の防災を進めること。さらには、地震にも水害にも強い復興まちづくりという複眼復興の視点です。

 

この『複眼防災』『被災後防災』『複眼復興』の3つの柱を軸に、複合災害に対しそれぞれの場所で対応していくことが求められます」

 

「ずっと災害が続いている国」に暮らす上で、「複合災害」という視点は、命を守るために不可欠になっているといえるだろう。

 

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出典元:

WEB女性自身

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