「早いもので、父・藤田まことの三回忌を迎えました。でも、私には父の死そのものがいまだにピンとこないんです。大阪では、いまも父が出演したドラマが再放送されていますし、生前父は仕事で1〜2カ月家を留守にすることが多かったですから。いまでも『ただいま〜』と帰ってくるような気がするんです」

こう語るのは故・藤田まことさん(享年76)の長女・原田敬子さん(48)。『株式会社藤田まこと企画』の代表取締役を務める彼女は32歳のとき、ハワイ在住で日系三世のゴルフのインストラクター(48)と結婚、13歳の女児のママでもある。

’33年生まれの藤田まことさんは、’73年、連続テレビ時代劇『必殺仕置人』に中村主水役で主演。その後、『はぐれ刑事純情派』シリーズ、『剣客商売』に相次いで出演し、俳優としての地位を不動のものとした。そんな藤田さんだったが、’08年4月、検査の結果、食道にがんが見つかり、6月の東京・明治座公演『剣客商売』を降板することになった。

「手術は’08年5月25日。8時間に及ぶ大手術でした。術後ICUに運ばれた父は麻酔から目が覚めると、また意識が朦朧としているにもかかわらず、枕元を囲む私たちに両手を合わせて『すまなかった』『ありがとう』と。そのあと、病室にいらした執刀医にも『ありがとう』と言ってから、力を振り絞るようにして手を出し、一人一人握手したんです」

藤田さんは手術から5カ月後の’08年10月下旬、『必殺仕事人2009』で現場復帰。しかし、’09年11月、慢性閉塞性肺疾患のため出演を予定していた連続ドラマ『JIN−仁–』を降板。’10年3月撮影予定の『必殺仕事人2010』での復帰をめざして療養生活を送っていたが、’10年2月16日の夜、自宅で倒れ17日午前7時25分、帰らぬ人となった……。

「倒れた日も、ベッドの上で”必殺”の準備稿を読んでる父の姿がありました。亡くなるまで”藤田まこと”であり続けた父を私は尊敬し、誇りに思っています。天国に旅立つときの身支度は、父がいつもディナーショーで着ていた黒のベルベットのスーツ。ちょっと窮屈だと思いましたけど『パパさん、ごめんなさいね』と言って、みんなで着せてあげました」

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