1999年に公開された映画『アイ・ラブ・ユー』で、日本初の”ろう者の主演女優”として脚光を浴びた忍足亜希子(41)。彼女は2009年11月に俳優の三浦剛(36)と結婚。今年の3月7日、長女を出産した。娘にはいつの日か、「聴者とろう者の”架け橋”になってほしい」と願っているという忍足さん。耳の聞こえないママの子育てを、初めて明かしてくれた。
「出産まではきわめて順調だったのですが、陣痛が始まってから生まれるまでに31時間もかかって……。生まれてすぐに赤ちゃんを抱っこさせてもらいました。赤ちゃんは泣いていましたが、私には泣き声は聞こえない。でも”響き”で『ああ、泣いているんだ』とわかりました。生後3日後に、先生から勧められて、娘の耳の検査をしました。『心配ですか?』と聞かれたので、『いいえ。全然平気です』と答えました」
彼女も夫も、妊娠がわかったときから「生まれてくる子がろう者でも、聴者でもどちらでもいい。仮にろう者であろうとも、元気で、すくすく育つよう、大きな希望を持ってしっかり育てよう」と思っていたからだ。新生児聴覚スクリーニングで、娘の聴覚が正常だったときも「よかった、よかった」ではなく「ああ、そうか」と感じたという。
「育児に関しては、最初のころは、主人が仕事で不在のときは大変でした。オムツを替えたのに泣き止まず、どうしていいのかわからなくて一種のパニック状態になっているときに、主人が知り合いの飲み会に行ったんです。飲みに行くのはいいんですが、その晩は11時を過ぎても帰ってこなくて。イライラとたまっていたストレスが爆発して、帰ってきた主人に食ってかかって、ワーワー大泣きしたことがありました」
いつも、どんなに辛いことがあっても、決して泣かない彼女だったが、「ああ、これが”マタニティブルー”なのか」と思ったという。ところで、聴者のお母さんは、泣き声を介して赤ちゃんとコミュニケーションをするが、耳の聞こえない彼女はどうしているのだろう?
「私の場合は、赤ちゃんの泣き声に反応する機械があるんですね。赤ちゃんが泣くと、機械が青く光る。機械には、電話と同じように親機と子機があって。親機を赤ちゃんの枕元に置いて、子機を持っていれば、家のどこにいても赤ちゃんが泣いているかがわかります。しかも、青い光はかなり強力で、私が寝ていても、パッと光ると目が覚めるんです」