《限りある人生を、有意義に暮らすよう、心がけていただきたい――》
 張りのあるやや甲高い声で、年代物の録音テープのなか、マッサンは新成人たちに、こう語りかけていた。大人気のNHK連続テレビ小説『マッサン』。そのモデルとなった故・竹鶴政孝氏の肉声の音源が、没後36年たったいまも、大切に保管されていた。

「私の祖父の遺品のなかに東京通信工業(現ソニー)製の紙製のオープンリールテープがあったんですよ」
 そう話すのは、1934年設立の大日本果汁(現ニッカウヰスキー)創業時から政孝氏の腹心だった故・五十嵐留治氏の孫・誠治さん(61)だ。
「祖父がわざわざ残したのだから竹鶴さんの声ではないかと推測しまして、数年前に、生前を知る方に聞いてもらって”間違いない”と判明しました」

 テープは1953年1月、北海道工場の成年の祝いの式典を、工場長だった留治氏が録音したもの。前年、本社を東京に移し、社名も「ニッカウヰスキー」に変更。麻布に新工場を建設するなど、順調に業績を伸ばすなか”原点”である北海道の新成人に向けて、社長である政孝氏が贈ったメッセージだ。

《一人前の人間としてこれから社会に立っていくうえに、いろいろの、心がけが必要である》

 若い社員を特に大切にしたというマッサン。このメッセージには、新成人に会社の未来、いや日本の未来を託したい、そんな思いが溢れている。

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