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今年スタートした『おんな城主 直虎』で56作目となるNHK大河ドラマ。国民的番組のこのドラマは、つねに時代を映しつづけてきた。そこで、“大河のヒロインが映す時代”と題し、豪華な女優たちが演じたヒロイン像とその“時代”を、テレビウオッチャーでコラムニストの林操氏とともに振り返る−−。

 

■2002〜2017年「女性の時代」の到来!『利家とまつ』『功名が辻』『篤姫』……話題の中心に女性が続々

 

21世紀に入ってから、大河ドラマでは女性を主人公とした物語が急激に増えた。ざっと振り返ってみると、’02年から最新作の『おんな城主 直虎』まで、16作品中7作品で女性が主人公である。’06年以降でみれば、2作に1度ほどのペースで女性がメインの物語が放送されている。

 

「家庭の在り方も、21世紀になって急速に多様化してきました。家庭でのチャンネル権も握るようになった女性が、マッチョな“男の物語”に共感するのは無理がありますよね」(林氏・以下同)

 

その先鞭をつけたのが『利家とまつ〜加賀百万石物語〜』(’02年)。信長と秀吉に仕え、のちに加賀藩主となった前田利家とその妻まつの物語は、大河ドラマとしては久方ぶりの「夫婦主役」ものだった。

 

「松嶋菜々子演じるまつは、容姿も話し方もトレンディドラマ的で、従来の時代劇ファンには衝撃的だった。完全に現代ものと思って見た人も多かったと思うし、それが逆に新鮮で人気につながったのでしょう」

 

というように、まさに大河ドラマ新時代の幕開けを告げる作品だった。’06年には再び「夫婦主役」ものの『功名が辻』が放送され、好評を博した。司馬遼太郎の原作をもとに、山内一豊と妻・千代の波乱の生涯を描いたものだ。

 

迎えた’08年、ついに「女性主人公の大河ドラマ」の存在感は不動のものとなる。田渕久美子脚本の『篤姫』が、21世紀に入ってからの大河ドラマとしては最高となる、24.5%の平均視聴率をたたきだしたのだ。

 

「世の中の人がほとんど篤姫という人物を知らなかったと思いますが、それが逆によかった。先入観がないだけに、実際の篤姫の写真とはイメージが全然違う宮崎あおいにも、違和感を抱かずにすみましたから」

 

幕末と現代の閉塞感が重なり、その中でたくましく生きる篤姫の姿に好感がもてたことも大きかったのだろう。その後も、徳川2代将軍・秀忠の正室となる江(『江』・’11年)、新島襄の妻・八重(『八重の桜』・’13年)、さらに吉田松陰の妹・杉文(『花燃ゆ』・’15年)と、個性豊かな女性主人公が次々と登場するようになっている。

 

「近ごろ、気になるのは、誰かの妻とか妹という“誰か”ありきであること。しかし、せっかく時代を代表する女優が演じる大河ドラマなのだから、女性として独り立ちしている人物が主役のほうがいい気がします。その意味では最新作には期待大ですね」

 

「女性の時代」を迎え、はや15年を経た大河ドラマ。『おんな城主 直虎』のヒロインが、混迷した時代をどう映し出すのか今から楽しみだ。

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