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2016年秋ドラマ「逃げるは恥だが役にたつ」が“ムズキュン”や“恋ダンス”などのブームを作り出し、20日放送回では20.8%の視聴率を記録して最終回を迎えました。数日たった現在は“逃げ恥ロス”なんて言葉も生まれ、しばらく人気は続きそうです。

 

このドラマのヒットを歓迎する一方で、中には「何が面白いのかからない!」と言う人や、「今さらブームに乗っかるのは恥ずかしい」なんて考えている方もいるようです。

 

ただ近年の“恋愛しない若者世代”の考えを考慮してドラマを見ていくと、このドラマが流行ったのはネットの“恋ダンス”などではなく、恋愛臆病世代の圧倒的な“共感力”を得ているからともいえます。

 

今回、若い人は恋愛しない時代と言われる中で、なぜ「逃げ恥」は恋愛ドラマとして大ヒットしたのか、その理由を紐解きます。

 

■「キズつきたくない」世代の共感が詰まってる

 

解説をする前に、まだドラマを観ていない人のためにストーリーをざっくり解説しましょう。主人公の森山みくり(新垣結衣さん)は、家事代行として訪れた津崎平匡(星野源さん)と就活先確保のため契約結婚をします。最初は一切の恋愛感情がなかった二人ですが、一つ屋根の下で生活していくうちに、お互いを好きになっていき、そして結ばれていくというお話です。

 

と、流れだけを言うと「契約結婚」という真新しさはあれど、特にとんでもない展開があるわけではありません。しかし今回大ヒットにつながったのには、二人の心の距離の縮め方に、「キズつきたくない」という今どきの若者が恋愛に対して抱く恐怖心を、十分に考慮した進み方をしている点です。いうなれば、「1歩進んで2歩下がって4歩進む」という感じ。

 

過去に色々挫折などを経験し臆病になった二人が、キズつかないよう周りの協力や偶然に助けられながら距離を縮めていく。これを“ムズキュン”と表現しているのですが、ただの萌えシチュエーションなのではなく共感を呼ぶ葛藤が描かれているのです。

 

■「自尊感情」の成長物語!

 

またキズつきたくないと同時に共感を高める要素が、このドラマの鍵でもある「自尊感情」です。

 

津崎平匡は35歳で恋愛経験ゼロ。森山みくりは恋愛経験こそあっても、ひどい振られ方をしたり、全面的に異性から自分を受け入れられるという経験のない女性です。つまり恋愛に関して全く自信のない男と女が、恋を少しずつ少しずつ進めていくことで、自尊感情を持ち、成長させていく物語でもあるのです。

 

日本人はもともと自尊心が低い傾向があるといわれていますが、世代が下になるほどその傾向は顕著。このドラマはそんな自信のない現代っ子(といっても大人ですが)に、「わかる!」という気持ちを生み出しているのです。

 

■物語通して誰かに共感出来る!

 

最後の共感ポイント、それは主人公の二人に共感できなくても作中の誰かに「わかる!」を抱けるようなドラマ設定がなされている点です。

 

たとえば脇役の中で1番人気のみくりの叔母、土屋百合(石田ゆり子さん)。彼女はアラフィフで独身。化粧品メーカーの広報部長代理として働くバリバリのキャリアウーマンです。そんな彼女は、作中自身の結婚観についてこんなセリフを述べています。

 

「こんなことなら深く考えずに、さっさと結婚しておけば良かった。未婚よりバツイチのほうが生きやすかったって思うんだよね」

 

婚期をすぎた女性であれば、グッときてしまうセリフかもしれません。

 

他にもみくりの親友で、若くしてデキ婚をした田中安恵(真野恵里菜さん)は、夫の浮気をきっかけに、シングルマザーになること、そして夫婦という関係に悩み涙する場面もありました。

 

このように、一見恋愛に不慣れな男女のムズキュン物語なのですが、登場人物全員が実は恋や愛、そして生き方に迷いながら、答えを見つけようとしています。大きな展開がなくても、物語には思わず引き込まれる共感と魅力があるのも、納得いくとおもいます。

 

ドラマは今ドキの恋愛現役世代の気持ちが詰まったもの。だからこそヒットしたということがよく分かりますね。もちろん“恋ダンス”や、多くのパロディが入ったのも話題となりましたが、あくまでもヒットしたから注目されたものです。

 

「面白さがわからない」という人は、そういった現役感から気持ちが老化している可能性も……ぜひ楽しんで見ながら、イマドキな恋愛感覚を感じてみてください。

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