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「半年前にチケットが当たってから、今日のライブをずっと楽しみにしていたので本当に残念です。中止の判断は仕方ないですが、国の対応があまりにも後手後手な気がしていて……」

 

こう語るのは3人組テクノポップユニット・Perfumeのファンだ。

 

2月26日昼すぎ、安倍晋三首相(65)は新型コロナウイルスの対策会議で今後2週間、スポーツや文化イベントなどの開催について中止・延期といった対応をとるよう要請。この発表を受け、Perfumeは同日予定していた東京ドームでのライブ公演中止を開演直前に決定した。

 

また同日に大阪・京セラドームで公演を予定していたEXILEも当日に中止を決断。さらに、星野源(39)や人気バンド・サカナクションらも近くに予定していたライブの開催延期や中止を続々と発表。プロ野球も29日から予定しているオープン戦の全試合を無観客試合とすることを決定した。

 

公演を待ち望んでいたファンが多くいるなか、苦渋の決断を下した数々のアーティストやスポーツ団体。中止や延期の対象と想定しているイベントについて菅義偉官房長官(71)は「全国から参加者を募ったり、国もしくは全国規模の団体が開催したりする、大規模なイベントを考えている」と述べたが、明確なガイドラインは提示されていない。

 

全て主催者側の判断に委ねられてしまう状況だけに、ネット上ではイベントを決行した側と中止した側の“分断”を不安視する声があがっている。

 

《こうやって次々とイベントが中止になると、次はイベントを実施した方に怒りの矛先が向くわけですよ。「○○は止めたのに、なんでやるの?」から始まって、「こんなときに非国民だ」ってエスカレートして、足の引っ張り合いにも似た地獄が待ってるわけ》
《国が「中止しなさい」ではなく「主催者側で考えて自粛して下さい」っていう責任をイベンター側に押し付ける形の対応を取ってるから、自称正義マンの矛先が全部主催者に向いちゃうんだよね。国は感染拡大させたく無いけど悪者にもなりたく無いっていうとても都合の良い考えなんだよ。マジで悲しくなる》

 

政府の要請前日の25日にコンサートを開催すると発表したPerfumeの運営に対しては、Twitterでこんな声が寄せられていた。

 

《中止を決めるイベントが多い中、コンサートを強行する理由が分かりません。自分達さえ良ければ良いって考えは非常に幼稚です。そのワガママのせいで#Perfumeに関係しない人が亡くなっても知らないっていう無責任な考えなのでしょうか?》

 

主催者には経済面でも苦難が待ち受けている。政府は中止や延期を決定した主催者に対する補償策は、一切発表していない。コロナウイルスによる中止や延期の場合、チケット購入者への払い戻しを決定している主催者が多い。つまり、会場費やスタッフの人件費といった多額の金額が負債となってのしかかることになる。

 

そうした苦境を明かしたのが、3月1日に予定していたライブ中止を発表した3人組バンド・Non Stop Rabbitのボーカルである田口達也。中止を発表した26日夕方、田口はTwitterに《コロナウイルスに感染していなくとも、生活が困難になる事実を政府に届けたい》としてこう明かした。

 

《今回のコロナウイルスによるライブの中止、保険は降りません。豊洲PIT公演にかかる会場費・制作費・人件費・グッズ代は1,000万円を超えています。通常通り開催できていればチケットの売上は1,200万円を超えているため、赤字になることはありませんでした》

 

続けて《ファンを守れるのであれば、赤字を背負うことに抵抗は全くありません》とするも、悲痛な思いをこう綴った。

 

《僕らの様なアーティストはこの規模のライブの中止で会社すら潰れかねない損失を受けます。音楽という仕事すら続けられなくなる可能性が中止の決断一つ出てしまうのです》

 

25日、コロナウイルスの政府への対応について菅官房長官は会見で「先手先手だと思います。しっかりやっている」と答えていた。果たして、政府の耳に主催者の“叫び”はどこまで届いているのだろうか――。

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