■テレビ局と制作側の連携がうまくいかず、あわや大惨事
さらに本多氏は近年気になった、バラエティでの“悪質な笑い”のケースを3つ挙げた。まず1つ目は’18年6月に放送された『水曜日のダウンタウン』(TBS系)での、コロコロチキチキペッパーズ・ナダル(37)を“突然車で連れ去る”という企画だ。
東京のJR恵比寿駅西側にあるロータリー付近でロケが行われたが、目撃した人たちが「男性が連れ去られた」と相次いで110番通報したことで、警視庁渋谷署が番組担当者を厳重注意したという騒動にまで発展している。本多氏は、こう述べる。
「ナダル君は番組のドッキリだと知らなかったと聞いています。たとえ知っていたとしても突然繁華街で嫌がる人を拉致するなんて、通報が相次ぐのも当然です。
TBS側は謝罪していますが、あの時、ナダル君はどれほど恐怖心を抱いたでしょうか。これがキッカケで彼が心身の不調を来していたら、番組側はどう責任を取るつもりだったのかを問いたいです。企画を立案したスタッフや、それを許した編成サイドも一般常識についての感覚や思慮が相当欠如しているとしか思えません」
2つ目は’13年7月に行われた、『SHINPUU3 奇跡の確率』(関西テレビ)の収録現場での出来事だ。それは素人男女10名の中からくじ引きで選ばれた人が、目隠しをしたGAG少年楽団(現・GAG)とコマンダンテの芸人5名に平手打ちをし、芸人たちが“叩いたのは誰か”を推理するというものだった。
番組側は参加者に「強く叩かないように」と指導していたという。しかしGAG少年楽団の福井俊太郎(41)は首のねん挫、そして坂本純一(38)は左耳の鼓膜が損傷する事態に。コマンダンテの安田邦祐(38)も軽い脳しんとうとなり、それぞれが全治1〜2週間のケガを負うこととなった。当時、本多氏は怒りのあまり関西テレビの編成に連絡を入れたという。
「手加減のわからない素人に本気で芸人を殴らせるなんて、“やってはいけないこと”のレベルがわかっていないにも程があります。電話で『素人にビンタさせる企画を知っていたのか?』と編成に問いただしました。返事次第では訴訟を起こすことも想定していました。
すると調査の結果、編成が知らされていた企画と制作サイドが実際に行った企画が全く違っていたとわかったんです。編成も番組を見て驚いていました。このように、制作現場とテレビ局の編成との連携がうまく機能してない事例もありました。あわや大惨事なのに……。本当に怖いなと思いました」