(画像は『THE SECOND』公式サイトより) 画像を見る

5月20日に開催された新たなお笑い賞レース『THE SECOND〜漫才トーナメント〜』(フジテレビ系)。出場資格を持つ結成16年以上の漫才師が130組以上エントリーしたなか、結成19年のコンビ・ギャロップが見事、初代王者の栄冠を手にした。

 

「結成16年以上」というベテラン芸人を対象とした出場資格とともに、もう一つ話題を呼んだのがその審査方法。お笑い賞レースといえば『M-1グランプリ』『キングオブコント』『R-1グランプリ』など芸人や有名人が審査員を務めることがほとんど。しかし、『THE SECOND』では、100人のお笑い好きな一般人がスタジオに集まり、審査員を務めたのだ。

 

この「一般人審査」について《変な贔屓無くていいシステム》と称賛する声もあれば、《一般人だけに審査させていいのかな》と“素人”が芸人を採点することに疑問を唱える人も少なくなかった。

 

果たして、昨今のお笑い賞レースでは異質ともいえる「一般人審査」はどのように機能したのか。お笑い評論家のラリー遠田氏に話を聞いた。

 

まずラリー氏は『THE SECOND』について「歴史の闇に埋もれた芸人たちの敗者復活戦」と評しつつ、運営サイドの手腕を称賛する。

 

「お笑い賞レースの初回というのは、スタッフも手探りで作っているので、演出や審査方法に不備があったりして、視聴者から不満が出やすいものです。『M-1』も『キングオブコント』も『THE W』も、第1回の時点ではそこまで完成されたコンテンツではありませんでした。

 

ただ、『THE SECOND』はコンセプトや演出がしっかりしていて、目に見える欠点のようなものが少なかった印象があります。ここはちょっと引っかかるとか、見ていて辛いなと感じるところがあまりなかったです」

 

コンビが1対1のトーナメント形式で対決し、3回勝ち抜いたコンビが優勝する『THE SECOND』のグランプリファイナル。100人の観客が3点満点で審査を行い、合計点が高かったコンビが次に駒を進めるという仕組みだ。このチャレンジングな試みである「一般人審査」の“仕組み作り”にも工夫が凝らされていたという。

 

「観客の一般人による審査に関しては、どういう審査方法にすれば公平性が保たれて、出場者や視聴者に納得感を与えることができるのか、というのが考え抜かれていました。実際、何点満点にするのか、1組ずつネタが終わった後に点数をつけるのか、2組が終わってからまとめて点数をつけるのかなど、スタッフがいろいろ試して検討していたそうです」

 

一般人審査の場合、出場する芸人のファンが推しに高得点をつけ、そうでない方に低い点数をつけるという懸念もあるだろう。しかし、『THE SECOND』のスタッフはそこにも真剣に向き合っていたようだ。

 

「審査をする観客の席にはスタッフからの手紙のようなものが置いてあって『出場する芸人は真剣に挑んでいるので、皆さんも真剣に審査をしてください』という趣旨のことが書かれていたそうです。個人的な好き嫌いなどではなく、自分で見て面白かったかどうかできちんと判断してください、というメッセージですよね」

 

『THE SECOND』では対戦が終わり、採点結果を発表する前に必ずMCの東野幸治がランダムで指名した審査員に感想を聞くというコーナーが設けられていた。これは一般人に緊張感をもたせる仕組みとして機能していたようだ。

 

「指名された人は『私はこの芸人にこういう理由で◯点をつけました』ということをしゃべらなくてはいけないんです。そうやって自分が当てられるかもしれないと考えると、きちんと根拠のある採点をしないといけなくなるので、特定の芸人をひいきするような不正がやりづらくなりますよね」

 

こうした細やかな採点方法には、大会サイドの出場する芸人への強いリスペクトが感じられるという。

 

「採点形式ではなく、対戦する2組のどちらか一方に票を投じるような審査方法にすると、自分の中では微妙な差だったと思っていても、必ずどちらかを選ばなければいけないですよね。すると、本当は接戦だったとしても、最終結果だけを見ると片方にばかり票が集まっていて、一方的な戦いだったというふうに見られたりする可能性があります。

 

一方、個々人が1〜3点の3点満点で採点すると、大きな差は生まれにくいし、ほとんど差がないと思ったら同点にしてもいい。すると、最終的な結果が実態を反映したものになりやすく、負けた方も健闘していたということがわかりやすくなります。この審査方法にしたのはそういうところまで考えられていたと思います。

 

これまでも『爆笑オンエアバトル』(NHK)など一般人が審査する大会はありましたが、観客審査に特有の欠点が指摘されることもありました。『THE SECOND』は、全員が納得できる公平な観客審査のシステムを作っていたと思います」

 

20日のグランプリファイナルでは、準決勝でマシンガンズがネタ中に2人とも紙を取り出し読み上げるという一幕が。漫才賞レースの決勝の舞台では珍しい行動に、大会アンバサダーを務める松本人志から「紙を出してきたのがどうとられるか、というのはあるでしょうね。プロの審査員ならちょっと…というところもあるかもしれないですが」と苦言とも取れる発言があった。

 

プロ審査と一般人審査の違いについて、ラリー氏は言う。

 

「一般人の審査は、自分が面白いと思ったかどうかが基準になると思います。『この間(ま)がいい』『このネタの切り口が斬新』といった技術的な部分は、プロじゃないと理解できないところもありますよね。

 

また、芸人が採点する場合には、それぞれの芸人が『漫才とはこういうものである』という漫才観を持っているので、『漫才では小道具を使ってはいけない』と考えて、マシンガンズが紙を出した時点で減点するということもあるでしょう。プロの芸人は自分の価値観に責任を負っているので、そういう考え方で審査をすることも許されているし、そうするべきだとも言えるのです」

 

ラリー氏は一般人審査の欠点として、マシンガンズの紙を例にあげて「芸人から見たら『これ反則だろ』みたいなのでも、勝てるみたいなところがちょっとある」としつつも、『THE SECOND』という大会の性質と「一般人審査」の“相性”についてこう指摘する。

 

「『THE SECOND』は芸歴制限がないので、極端に芸歴の長い大ベテランが出場する可能性がある。芸人が審査員をするとしたら、その人が自分よりも先輩の芸人を審査しなければいけないことになるかもしれない。そうなると採点しづらいし、偉そうなことも言いづらい。

 

また、『M-1』は結成15年以内を対象とした新人賞レースなので、発展途上の芸の技術的な良し悪しを審査基準にすることができる。

 

一方、『THE SECOND』は芸歴16年以上ある芸人だけが参加しているので、技術的には全員が一定の水準をクリアしていて、みんな文句なしに上手い。そうすると、プロの目線で技術的な差を基準にして審査をすることが難しくなります。

 

それなら現場にいるお客さんがどっちが面白かったかで決める、という方がむしろすっきりしているという考え方もあるのだと思います。『M-1』に比べていろいろな種類の芸風の人に勝てるチャンスがありますよね」

 

こうした議論を踏まえても、『THE SECOND』は「一般人審査」の“新たな可能性”を見出したようだ。

 

「『M-1』の敗者復活戦などでは視聴者投票がありますが、視聴者が実際に番組を見ていたかどうかはチェックできないので、投票する側が責任を負っていないんですよね。何も見ていなくても、好き嫌いだけで気軽に投票できてしまう。だからこそ、一般人による審査は良くないという風潮がありました。

 

しかし、今回の『THE SECOND』では、巧みな仕組み作りによって、多くの人が納得できる一般人審査を実現していました。その可能性を示したという意味でも意義のある大会だったと思います」

出典元:

WEB女性自身

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