■Xに掲載された画像に「はっきり言って下手な発表の仕方だった」と識者も指摘
全国の書店員が投票する「本屋大賞」の映画版ともいえる「映画館大賞」だが、困惑が広がってしまったのはなぜだろうか? 同賞が波紋を呼んでしまった原因や今後改善すべき課題などについて、映画ライターのヒナタカさんに分析してもらった(以下、カッコ内はヒナタカさん)。
「個人的には、ある程度は“妥当”な結果だとも思います。映画館のスタッフは正社員だけでなく、アルバイトやパートタイマーの方も多いですし、みんながみんな、“月に何本も映画を観る”“知る人ぞ知る名作を積極的に観る”映画ファンではありません。3000名を超えるスタッフから投票を募れば、やはり単純に“観ることができた”作品に票が集まるのは当然のことではないでしょうか。
一方で、今はごく一部の国民的なコンテンツの映画に観客が殺到し、中小規模やオリジナルの作品が苦戦する“二極化”が進んでいて、特に『名探偵コナン』や『鬼滅の刃』は“まるで時刻表”と喩えられるほどに映画館のスクリーンを“寡占”したことが話題になりました。
だからこそ、“もっと他にも、多くの人に知られないまま、上映終了してしまった名作はあるのに”という映画ファンの心情も無理からぬことですし、その“寡占”のために映画館のスタッフの多くもまたごく一部の映画しか観ていないことが、この結果につながったといえます」
いっぽう超大ヒットではなかったものの、『フロントライン』(’25年6月公開)や『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』(’25年1月公開)といった一部映画ファンから強い支持を得た作品も選出されており、評価すべきところもあったという。それだけに、Xでの発表方法は裏目に出てしまったようだ。
ヒナタカさんは「失敗したと思えるのは、受賞結果をX公式アカウントで、“各部門の3位までを1枚の画像で一挙に発表した”ことではないでしょうか」と指摘した上で、こう続ける。
「各部門の3位までの結果を見て、“売れている映画を並べているだけ”と判断されてしまうのはもったいないのですが、実際にそう見えてしまう、はっきり言って下手な発表の仕方だったと思います。
さらに、明確によくなかったと指摘したいのは、『映画館スタッフイチオシ(日本映画部門&外国映画部門)』という名称を使った部門です。公式サイトには『2026年4月1日(水)以降に上映予定』『これから上映される作品を対象にした2部門』と明記されており、そもそもスタッフが未見であることを前提にした賞なんです。
だからこそ、たとえば『期待作』といった意図がわかりやすい表記にするべきだったでしょう。イチオシという“推す理由がある”と思わせる名称を使ってしまっては、“なんで観ていない作品に投票しているんだ”という声があがるのも当たり前だと思います」
いっぽう「映画館大賞」と「本屋大賞」は、“全国で働くスタッフの投票によって決まる”という点で共通するが、双方にはどのような相違点があるだろうか?
「明確に異なるのは、『本屋大賞』は発表時に対象となった本を店頭に置くことで売り上げにダイレクトに繋げられる一方で、『映画館大賞』は“ランキング発表時にはすでに上映が終わっている”作品がほとんどであることです。
つまり、“すでに上映終了後の作品をあげても映画館側にうまみがない”からこそ、『映画館大賞』では“選ばれた作品を映画館で再上映する”という取り組みがされています。実際に『国宝』『鬼滅の刃』『罪人たち』『ウィキッド ふたりの魔女』が、4週連続で再上映されることが決定しました。
また、実際は『期待作』である『イチオシ』部門も、これから先の映画館の売り上げに繋げるために必要なものだったと理解できます。それらは『本屋大賞』とは異なるアプローチと言えるでしょう」
