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「いつも僕は息子(坂東新悟)に『おまえが失敗しても俺に謝るのはいい。でも、今日のお客さまは一期一会なんだから、お客さま全員に謝ってこい』と怒っていました。でも、今年行った歌舞伎のヨーロッパ公演は、自主公演なので、自分ですべて考えなきゃいけません。役者は役者に専念しないとダメ。踊りの振りをフッと忘れてしまうんです。今回は逆に息子に『今日のお客さま全員に謝ってください』と叱られまして……。『そ、そうだよね〜』とごまかすしかなかったですね(笑)」

 

そう語るのは、隔週連載『中山秀征の語り合いたい人』第72回のゲスト・歌舞伎俳優の坂東彌十郎さん(60)。故・中村勘三郎さん、故・坂東三津五郎さんとは、若き日から苦楽をともにした幼なじみで、伝統芸能を継承するいわば“戦友”。2人のスターが逝った今、歌舞伎に並々ならぬ熱い思いを抱く坂東彌十郎さん。公演の合間の歌舞伎座にて、中山との初対談スタートです。

 

中山「梨園の子育ては難しいですか?僕は勘九郎君や七之助君などから話を聞くことが多いので、父親側はどう考えているんだろうって」

 

坂東「彼らは勘三郎さん(享年57)が亡くなって1年ほどで、ものすごく変わりました。勘三郎さんは亡くなる前『今月、声の出し方悪いんだよな』と、子どもたちのことをすごく気にして、コソコソ僕に耳打ちしていたんです。でも、もう何も言わなくても2人とも大丈夫ですもんね」

 

中山「親が悩んでいたところで、意外に子どもはたくましいものなのかもしれません」

 

坂東「勘九郎君の2人の息子たち、七緒八(5)と哲之(3)は、大叔父さんにあたる中村芝翫さんの襲名公演を見に来ていたんですよ。口上を見て、『僕たちもアレやりたい』と言っていたそうです。だいたい役者の初舞台は4歳くらい。歌舞伎の家に生まれたからと言って、小さな子どもに芸を強要するのはかわいそうな気もしますが、ほとんどの子どもは自分で『やりたい』って言いだすんですよ」

 

中山「やっぱり育つ環境もあるんですね。親戚みんながやっているのを見ていれば、やりたいと思うものなんですね」

 

坂東「そうみたいです。歌舞伎の家の子どもは基本的に芝居好き。僕が家に遊びに行くと、必ず遊び相手をさせられるんです。どこへ行っても斬られてますよ(笑)。あと、僕は背が高いので、肩車。『高い高いのオジチャン』と呼ばれています」

 

中山「彌十郎さん、183センチもあるとか!」

 

坂東「そうなんです。最近は市川中車さん(香川照之)の息子さんの團子ちゃんも肩車しました。芝翫さんは小さなころから芝居小僧でしたね。芝翫さんが小学生のときに、ジェシカ・ラング主演の映画『キングコング』に連れていったんですよ。見終わった後に、『彌十郎さん、キングコングっていい人かな、悪い人かな』と聞いて来た人が、今や立派になってねぇ……」

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