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「『いのち』(’86年)と『花の乱』(’94年)の2作品に主演することができましたが、役者にとって大河ドラマというのは、本当に特別な存在なんです」

 

こう話すのは、55年という長いNHK大河ドラマの歴史の中で、唯一、2度にわたり主人公を演じた女優・三田佳子(75)。今年スタートした『おんな城主 直虎』で56作目となる国民的番組・大河ドラマは、つねに時代を映しつづけてきた。そんな大河ドラマの知られざる舞台裏を彼女が語ってくれた。

 

「『いのち』は、大河で初めての架空の主人公で、ヒロインは、戦前戦後を生き抜いた女医・高原未希。当時43歳だった私が、彼女の20歳から60代なかばまでを、一年を通して演じる。これは、題名さながらに“命を削る”仕事でした」

 

橋田壽賀子の脚本では、主人公はほぼ出ずっぱり。そのうえ5〜6回分を並行しての撮影も。若いころから50代までの未希を、1日で演じることもザラだった。

 

「同じ未希でありながら、年代によって外面も内面も異なる彼女を演じられたのは、映画界で鍛えられた経験があったからこそだと思います。映画で徹底的に役を掘り下げた経験が生きたんでしょうね。たとえば、ドラマの冒頭では、率先して顔をすすだらけにして演じました。当時、テレビで女優がそこまでやることはめずらしいことでしたが、そういう必死の努力をしながら、作品を作り上げていったものです」

 

20歳のころの未希を演じたせいで、視聴者の中には彼女を20代だと思い込んだ人もいたようで、そうしたファンがロケ現場まで追いかけてくることもあったそう。それだけ主人公の生き方と重なり合うことができたという証だろう。

 

「実は『花の乱』のお話を頂いたときは、何度もお断りしたんです。大河ドラマの大変さは、『いのち』で心底身にしみていましたから。当時は私も50代。また、大河をやったら、生活の多くを犠牲にすることになる、とわかっていたからです。悩み抜き、それでも最終的に演じることになった日野富子は、希代の悪女。でも、深く演じれば演じるほど、モダンで先見性のある魅力的な人物でした。幽玄の世界と現世とを行き来するようなドラマは、密度が濃く、役者、そして人として、あらゆる引出しを使わなければ演じきれない。あまりのプレッシャーに、さすがに心が爆発してしまったこともありました」

 

そんなときには撮影を中断して、スタッフと夜中の代々木公園へ散歩に行き、帰ってきてからまた撮影を続けたという。

 

「でも、そうやって、やっとできあがるのが大河ドラマなんですね。脚本、演出、スタッフ、役者とすべての人が一丸にならないとできない。そして最終的には、そうした苦しみを上回る充実感があるからこそ、大河を乗り切れたら、『どんな仕事でもやれる』という自信につながる。そんな大河で、女性として尊敬できる主人公たちと出会えたのは、女優としてかけがえのない、特別な財産です」

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