「私はこの映画がヒットしたときに、“まだまだ世の中も捨てたものじゃないな~”と思いました。映画館に足を運んでくれた多くの方々が、“今の時代、これでいいの?”“(戦争が)私たちにも起こりうる現実に、ちゃんと気付かないといけない”。そして“この先にもずっと伝えていかなければいけない……”。そう思ってくださったんだと思えて、すごく感動しました」

 

こう語るのは、大ヒットアニメ映画『この世界の片隅に』で、主人公すずの義姉・径子の声を担当した、女優の尾身美詞さん(34)。『この世界の片隅に』は、第90回キネマ旬報ベスト・テン日本映画第1位をはじめ、数々の映画賞を受賞。現在もロングラン上映中である。

 

そして12月には、さらに約30分の新規シーンを追加した別バージョン『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』が公開されることが決まり、早くも多くのファンたちの間で話題沸騰中なのだ。

 

その新作でも重要な役どころの声を演じる尾身さんに、“さらにいくつもの”追加シーンについて聞いてみた。

 

「じつは私も、まだ知らないんです。だからどこのシーンが増えるのか、皆さんと同じように早く知りたいな~という感じです。先日、片渕須直監督とお会いしたら、『まだ一生懸命に絵を描いている状態で、いろいろ延びてるよ』と言われました。12月公開なのに、これは大変な収録作業になるかも……とドキドキしてます(笑)」

 

彼女が、『この世界の片隅に』で径子の声を担当することになったのは、オーディションを受けたことがきっかけだった。

 

「映画のオーディションで読む原稿は、事前にもらったのですが、当日原稿にない部分のシーンをやってくださいと言われて……。オーディションに来たほかの人たちは焦っていましたが、私はもともと原作が大好きで、すでに何度も読んでいました。漫画も持参していたので、『大丈夫です。上巻のあのあたりですね?』とか言って、漫画をペラペラめくりながらセリフを言ってみたんです(笑)」

 

片渕監督からは「この漫画が好きなの?」と関心を持たれた尾身さん。その後、「すずさんを読んで」「径子さんを読んで」と、漫画を読みながらオーディションが進んでいく。

 

「監督から最初に『径子さんを読んで』と言われたとき、エッ、私が径子さん? と思ったんですけど。でも自分がイメージする径子さんはこうだと思って、思い切り怒鳴りつけるセリフを読んだら、なんだかスッキリして(笑)」

 

じつはこのシーン、映画の中で径子が最初にすずを叱りつけるシーンだった。このオーディションのときに収録された尾身さんの迫真のセリフが、片渕監督が思い描いていた径子のイメージにピッタリとハマり、彼女は径子役に抜擢されたそうだ。

 

尾身さんは、劇団青年座の舞台で活躍する女優で、アニメの声優をするのは、『この世界の片隅に』が初めて。映画公開後は、声優としても注目されている。