「じつは私も、(追加シーンを)まだ知らないんです。だからどこのシーンが増えるのか、皆さんと同じように早く知りたいな~という感じです。先日、片渕須直監督とお会いしたら、『まだ一生懸命に絵を描いている状態で、いろいろ延びてるよ』と言われました。12月公開なのに、これは大変な収録作業になるかも……とドキドキしてます(笑)」

 

こう語るのは、大ヒットアニメ映画『この世界の片隅に』で、主人公すずの義姉・径子の声を担当した、女優の尾身美詞さん(34)。『この世界の片隅に』は、第90回キネマ旬報ベスト・テン日本映画第1位をはじめ、数々の映画賞を受賞。現在もロングラン上映中である。

 

そして12月には、さらに約30分の新規シーンを追加した別バージョン『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』が公開されることが決まり、早くも多くのファンたちの間で話題沸騰中なのだ。

 

尾身さんは、劇団青年座の舞台で活躍する女優で、アニメの声優をするのは、『この世界の片隅に』が初めて。映画公開後は、声優としても注目されている。

 

「昔から歌ったり、踊ったりすることが好きでしたが、母が『普通の女の子に戻りたい』と言って芸能界をやめた人だったので……。じつは物心ついたころから、そういうことはいっさいやってはいけない。口に出してもいけないと、ずっと思っていたんです」

 

そう、彼女のお母さんは、元キャンディーズの“ミキちゃん”こと藤村(旧姓)美樹さんなのだ。

 

「母は私に“普通に生きてほしい”と思っているだろうなと感じていました。でも、どうしても血が騒ぐのか(笑)、高校生のときに進路を考える中で、こういうお仕事をしたいと思うようになりました」

 

彼女は中学・高校時代に、合唱やミュージカルをやる部活に入り、そこからどんどん舞台で芝居をすることに興味を持つようになっていったという。

 

「一度しかない人生、私がやりたいのは舞台のお仕事。母のいた芸能界とは違うので、きっと反対されないのではないか。そこで思い切って母に相談したら、『私には舞台のことはわからない。芸能界じゃないからいいわよ』という感じで、理解してくれましたね」

 

念願の劇団に入団した尾身さん。だが、とても舞台だけでは食べていけない厳しい現実が始まる。

 

「20代後半になって、“もうこのままの状態では無理だ”と思い、母には内緒で、これまで断ってきたバラエティ番組に2世であることを隠さずに出ることにしたんです。でも、やはり番組収録の直前に、母には出ることを打ち明けました。すると……『言ってることが違うじゃない! 劇団は芝居だからいいって言ったけど、芸能界の仕事をするのは話が違う!』って、猛反対されましたが、なんとか説得して出演しました(笑)」

 

それまでにも“青年座にキャンディーズのミキちゃんの娘がいる”という噂を聞きつけたテレビ関係者から、番組出演のオファーが何度もあったという。尾身さんによると、今では娘がテレビに出ることに反対することもなく、楽しみにしているとか。

 

だが、お母さんの願いは「役者としてちゃんと生きていくこと」だと、彼女自身がしっかりと認識している。自分の娘が出演する舞台はもちろんのこと、『この世界の片隅に』も映画館に何回も足を運んでいるというから、彼女のことを全面的にサポートしていることがよくわかる。

 

「うちはわりと頻繁にコミュニケーションをとっているほうだと思います。母から『すごくいい映画で感動した』って、言われました。自分の親とか親戚と一緒に映画館に行ったり、DVDを買って見たりもしているみたいですよ(笑)」

 

『この世界の片隅に』の“新作”が公開されることが決まってから、ファンの期待は日に日に高まっている。きっとお母さんは、それ以上にワクワクしているに違いない!?

 

「片渕監督は『できることなら、42時間ぐらいの作品を作りたい』と、おっしゃっていました。それぐらいどこもカットできない、大切なシーンが多いのだと思います」

 

そんな、新作の楽しみ方は?

 

「いま上映中のバージョンをもう一度見直し、予習してからどのへんにどんなシーンが追加されるか。公開までにそういう想像をするだけでも面白いと思います」