橋爪功 出演舞台で得た教訓「認知症の家族がいたときには…」

「亡くなった樹木希林さんと話したものですよ。『俳優としてこんなに生き延びるって思わなかったね』って。年を重ねると先に逝かれる人がいて、さびしいことです」

 

そう語るのは、映画『家族はつらいよ』シリーズで、日本の平均的な家庭の父親を好演する橋爪功(77)。今回はフランス発、注目の舞台『Le Pere 父』(2月2~24日/東京・東京芸術劇場 シアターイースト、3月16・17日/兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールほか、上田、高知、名古屋、松本で公演)で、高齢の父親アンドレを演じる。

 

80歳のアンドレは自分から望んでアパルトマンで一人暮らしをしているが、認知症を発症し、娘の気をもませている。

 

「アンドレは女房に関しても悪態をつくんです。俺も言ってみたいよ。いや、うちは一緒にお酒を飲むくらい仲はいいんですけどね(笑)」(橋爪・以下同)

 

脚本は、気鋭の劇作家、フロリアン・ゼレールだ。

 

「台本を読んで、よくできたお芝居だな、と。書いた彼はまだ30代。たいしたもんです。ややサスペンスタッチだとも言えるし、複雑で面白い。読んでいて混乱してくるんですよ。よくできている台本だからこそ、ね」

 

認知症を発症した家族に、周りの人たちは、どう向き合えばいいのか――読者にとっても人ごとではない。しかし、橋爪は「深刻にならなくていい」と語る。

 

「思うんだけどさ、よく“赤ん坊に返る”っていうじゃない? そういう目線でお年寄りと接していけば、あたふたしなくてもいいんじゃないかな。高齢の親がへんてこなことを言ったとしても笑っていればいいと思う。昔は地域全体が『あのじいさんボケてるから』なんて言って受け流してた。最近の人は地域のつながりが少なくなって、全部を個人で引き受けなきゃいけないから大変だよね」

 

物語は、記憶と現実にギャップができ困惑する父と、彼の変化に戸惑う娘の姿を描く。

 

「それだけを表現するんじゃなく、むしろいろんな乱反射というかね、深刻な面に見え隠れするトンチンカンな現実をむしろ楽しめればいいね。キャッチコピーの『哀しい喜劇』って言葉はまさにそういうことだと思うんですよ」

 

俳優としてのキャリアは50年以上。長く続ける秘訣は、「小さな事柄にいつまでもこだわらないこと」だそう。

 

「楽観的でぼーっとしてるの、俺。気になることがあっても忘れるよう心がけている。というか、すぐ忘れる。こだわらないためのおまじないなんか考えちゃって。どんな、って? それは秘密。人に教えちゃダメなんですよ(笑)」

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