林真理子、阿川佐和子らが薦める「心をうるおす1冊」

「この世界的な危機において、不安や不調やストレスを抱えながらふと、もしかしてこれは地球が人類に与えたお仕置きではないかと思うことがあります。そんなとき、’09年に肺がんで亡くなった動物行動学者の日高敏隆さんの本を手に取り、一語一語に接していると、日高さんの声と表情がよみがえり、無知なわが身を嘆かわしく思いつつも、いつしか心が落ち着いてくるのです」(作家・阿川佐和子さん)

 

新型コロナウイルス感染拡大により、外出を控えたり、あふれる情報に戸惑ったり−−。そんな心のざわつきは、1冊の本との出合いによって和らぐことがある。私たちと同じ時代を歩いてきた女性作家が「今こそ読んでほしい」とすすめる本。

 

■林真理子さん(66)/新潮文庫『愛と死』武者小路実篤(新潮社)506円

 

約100年前、世界中で数千万人が命を落とした「スペイン風邪」が大流行した昭和初期を舞台に、文豪・武者小路実篤が描いた至高の愛。逆立ちと宙返りが得意な、活発で愛嬌のある夏子に引かれていく小説家の村岡。彼のパリへの洋行後、結婚する仲となったが……。

 

「涙なくしては読めない、私が大好きな名作です。妻となる夏子とようやく再会できる2週間前に船上の彼に突然届いたのは、夏子が流行性感冒で亡くなったという知らせ。スペイン風邪が大流行した時代背景に描かれた不朽の恋愛小説です。多くの人に手に取ってほしい1冊です」(林さん)

 

■阿川佐和子さん(66)/『ホモ・サピエンスは反逆する』日高敏隆(朝日新聞出版)770円

 

人間が特別に賢い生き物だという思い込みは人間のおごりであるーーと語ってきた動物行動学者の日高敏隆氏が、若かりしころに書いたエッセイ。

 

「研究し考え抜かれた、ホモ・サピエンスという生き物、男女やオスメスの違いなどについての爽快かつ博識にあふれた、そして極めて率直な語り口のエッセイ集。かつて日高先生の講演を聴き、穏やかそうにお見受けする先生の口から飛び出す話は無限におもしろく、あまりのおもしろさに感動して雑誌の対談にお招きした。今、もし日高さんが生きていらしたら、このコロナ騒動をどう受け止められるだろう」(阿川さん)

 

■唯川恵さん(65)/文春文庫『降り積もる光の粒』角田光代(文藝春秋)726円

 

国内外問わず、旅好きだが旅慣れない角田光代が出会った人、出来事など旅の記憶を集めたエッセイ集。

 

「外出もままならぬ今、せめて旅のエッセイで気持ちを解放させてほしい、という思いはあるが、楽しいだけで終わらないのが角田さんである。今、全世界の人々が恐怖や不安やいらだちを共有している。そこに国境はない。すべての人間はつながっているのだとあらためて感じさせてくれる逸品」(唯川さん)

 

※価格はすべて税込みです。

 

「女性自身」2020年5月12・19日合併号 掲載

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