■断捨離しつつも大好きな宝石は捨てられない。でも終活だって、迷い迷いでいいじゃない!
「還暦過ぎて、東京から熱海に引っ越してきたのが63歳前後。もうこのころには、自分がしっかり仕事をできるのは70までと思っていたから、すごく焦ってたわよ。終活は、やっぱり、橋田先生を看取ったことが大きかった。
実は、その直後に親友も亡くしていて。先生のことで落ち込んでたときに元気づけてくれたのが彼女で、ご近所だったから、『ピン子ちゃんの介護は、私がするから』なんて言ってくれてた。その私より年若い相手が、まさか先生の納骨からわずか2カ月後に突然亡くなるなんて、誰が思いますか? それで私、今まさに終活の最中で、クローゼットの段ボールから片づけてるんだけど、やたら部屋が散らかっちゃってさ(笑)。
手紙が出てきたら、懐かしくて読んだり。写真は、これどこだっけかなと考え始めたり。箱ごとバンと捨てるのがいいなんて言いますけど、引っ越してから10年以上そのままだから、何が入ってるかわからないじゃない。
ピン子自身、かつてはシャネルなどブランド好きで有名で、本誌でも「ブランドの洋服や靴を買いたいと思う気持ちが私の原動力」と語っていた。
「ブランド物も、総額で億は使ってるけど、これも断捨離の途中。かわいがってる2人の後輩の女優にあげようとしたら、怒られたり。『まだ早いですって言うのね。かと思えば、こないだテレビに出てブランド物の処分を考えてると話したら、直後から局に連絡がバンバン届いたそう。『タダで引き取ります』とか『お金に換えます』って。余計なお世話、自分で換えるわよ(笑)。
だけどね、処分してても、本当に好きな宝石は、ダイヤでもエメラルドでも人にはやりたくないのも本音。真珠のネックレスなら、こう縦にのみ込んで、途中でつっかえて、そのまま死んでもいいやなんて考えちゃう(笑)。
いちばん困るのが、賞。うちの夫もそうなると思うけど、遺された人は賞状などの処分に悩むと思うの。でも、当人以外にはゴミかもしれない。だったら、今のうちに自分の責任でと思って、菊田一夫演劇賞も橋田賞も賞状はすべて捨てました。つくづく思うのは、終活は、迷い迷いですね」
仕事上の人間関係もすでに断ち切りつつあるといい、芸能史に残る長寿シリーズとなった『渡鬼』の出演者たちも例外ではない。
そんななか、3年前に突如巻き起こったのが、このドラマで息子を演じたえなりかずき(37)との共演拒否騒動だ。
「あれも、最初は橋田先生が雑誌で語ったことから始まったの。私が私生活まで立ち入って小言を言ったって? 私には、かずきでも誰でも、収録後に無駄話をしてる時間なんてなかったの。だって、次の橋田先生の長台詞を頭に入れるので、それどころじゃない。そもそもかずきとは、ここ何年も会ってないんだから。
以前は役柄同様、子供のように思った時期もあったけど、今は向こうも、いい大人。だから、その考えることに、私からどうこう言うつもりはないし、悪口を言われても私は気にしません。
みんな驚くけど、かずきだけでなく『渡鬼』の役者仲間の電話番号もほとんど知らない。数少ない親交のあった野村昭子さん(享年95)も7月に亡くなったしね。30年も一緒にラーメン作るシーンを撮ってきて、もういいわよ。そもそも、仕事場には友達を作りに行ってるんじゃないってことよ」
【後編】泉ピン子が明かす理想の死に方「芸能界と社会から自然にフェードアウトしたい」へ続く
【INFORMATION】
『朗読劇 泉ピン子の「すぐ死ぬんだから」』(内館牧子原作・8月4~14日)はあうるすぽっと〈東京・池袋〉にて、ほか全国11都市で上演。
(問い合わせ先)キョードー東京 0570-550-799