「そこからトントン拍子に話が進んで、NBA公認イラストレーターの肩書をいただいたんです。ただし、NBAの仕事が始まると、カリカチュア世界一で極めた人物デフォルメして描く手法は使用NG。そのため、新しいタッチを確立させていきました」
最初のオフィスは、東京都足立区にある小さなアパートのワンルーム。そこから1年を待たずして、大きな目標を達成してみせた。
NBAのお墨付きを得て以降、SNSに絵をアップし続ける「田村大の小さなギャラリー」には、一般ユーザーから有名人まで、世界中から鑑賞者が集まるように。
「このフォロワー数が、そのままアーティストとしての自分の“戦闘力”になると信じて、毎日のようにアップしていました」
あるとき、田村さんがアップしたNBAのスーパースター、レブロン・ジェームズの絵に《かっけえな》とコメントが。反応したのは、タレントの武井壮(52)だ。
「そこから交流が始まり、ある日、都内の高級店で焼き肉をごちそうになったんです。“名前を売る”戦略など、武井さんはご自身の体験に基づいて本気のレクチャーをしてくれました」
別れ際、武井はスーパーカー・マクラーレンに乗り込み、爆音のエンジンとド迫力のクラクションを鳴らして去って行ったという。
「武井さんは、あえてそういう景色を見せてくれたのかなと。『お前もここまで来いよ』というメッセージに感じました」
田村さんの作品集の帯コメントも寄せてもらうなど、武井とはいまも交流が続いている。韓国発の世界的アーティストBTSのメインボーカル・ジョングク(28)のイラストを描いたときは、フォロワーが1週間で11万人も急増。彼のパーソナルトレーナーが、ジョングクの誕生日にプレゼントしたいという依頼を受けてのものだった。
「ジョングクがSNSに僕の絵の写真をアップしてくれたんです。それがネットニュースになって、一気にたくさんの人に僕の名前を知ってもらうことができました」
絵を通じて、バスケ界の憧れのスターとのつながりも。
「NBAのスター“シャック”こと、シャキール・オニール選手のファンで。依頼されてもいないのに彼の絵を描いてインスタにアップしたんです。それを本人が気に入ってくれたようで、シェアしてくれたこともありました」
その後、長年にわたってシャックの相棒だったコービー・ブライアント選手がヘリコプターの墜落事故で亡くなってしまう悲劇があった。直後に、シャックから追悼の絵を描くよう頼まれた。
「悲しい出来事でしたが、やはり僕の使命は『誰かのために描きけることだ』と確信したんです」
