「社会に救いがない」新興宗教や海外に“逃避”する韓国の若者
画像を見る 疲れ切った若者

 

■現実逃避で新興宗教に入信する若者たち

 

――実家にも、結婚にも、仕事にも、なかなか希望が見出せない。そんな韓国の若者たちの心の拠り所となっているものは一体なんでしょうか?

 

「宗教が心の支えとなっている部分も少なくないと思われます。日本の若者と較べると、信仰心を持っている人が非常に多いです。

 

韓国全体でも仏教徒が2割ほどなのに対し、キリスト教徒は約3割。若者たちのほとんどは二世信者ですが、自ら積極的に教会へ足を運んだり、聖書の勉強をしたりと、自発的な信仰心を持っている人も多いです」

 

ただ問題となっているのが、洗脳を伴う新興宗教の存在。たとえば『新天地イエス教証しの幕屋聖殿(略称:新天地)』という、キリスト教系の新興宗教の信者が韓国の若者の間で急増しています。昨年、新天地が新規入信者の10万人中1,000人を無作為に抽出して行ったアンケートでは、20代・30代が全体の67%を占めていることが判明しました」

 

――文化庁のデータによると、日本では新興宗教の信者数が全体で4割減ったと見られています。日韓で大きく異なっていますね。

 

「彼らはもともと聖書の教えなどに素養がある場合も多いです。そこで抱えていた疑問点が新天地の解説によってどんどんとクリアになっていく、そうした過程で“ハマって”いくケースもあるようです。

 

また新天地に入信する人で多いのは、人間関係にコンプレックスや恐れを抱いている人たち。旅行へ誘われたり、苦しい気持ちを吐露すればともに泣いてさえもらったり。そうするうちに抜けられなくなってしまうようです。

 

ただ不思議なのは、親などの働きかけで“脱洗脳”を施されると、わずか2、3日で完了してしまう場合が多いこと。これでは一般にイメージする洗脳とは違いますよね。私には、“洗脳”されているというよりも、より信じられるなにかを求め“迷走”しているように思われてなりません」

 

■日本での就職に活路はある?

 

――語学力の高い人が多いとも聞きました。ここまで国内で希望が見いだせないのであれば、国外に活路を求めてもいいのでは、と思いましたがいかがでしょうか。

 

「実際、最近では日本での就職活動を行う人も多いです。今の20代の若者は、キム・デジュン大統領による対日大衆文化開放政策の影響で、幼少期から日本文化に親しんでいる世代。距離の近さやビザ関係の問題に加え、文化的な共感などから、外国での就職を考える場合には日本が第一候補となることも多々あります。

 

また日本はアジア圏の外資企業のハブともなっていますから、英語力を活かした就職活動という点でも魅力的なようです」

 

――韓国の若者たちは学力面など、総じてハイスペックとも聞きます。日本で就職活動しても優良企業に入社できそうです。

 

「世界的に見て特殊な日本の就活事情に苦戦するようです。日本の場合、ポテンシャル採用といいますか、時にスキル以上に個人の経験や人柄が重視されてしまう。そうした点が子どもの頃から勉強漬けで、スキルありきの考え方や生活に染まった韓国の若者たちの壁となっていると聞きます。

 

また、そもそも外国で就職したい人たちばかりでもないですよね。特別優秀でもないけれど、平凡に生きていきたい。そんな人たちの受け皿が韓国にはなかなかないなと感じます。

 

婚外子を認めない、中卒高卒を認めない、同性愛を認めない、最高峰のメインストリーム以外を認めない、そこから外れたものを敗者とみなしてしまう。ゼロサムゲームを幼少期から叩き込まれているせいなのか、『エリート』になる以外の道を考えにくい。それが韓国の若者たちの苦しさの最大の要因なのじゃないかと、私は思っています」

 

救いの場を求めて宗教に入信するか、外国に移住するか――。真面目に努力を続けた果てにあるのがこうした選択肢ばかりかと思うと、韓国の若者たちの絶望を感じられます。

 

「もちろん、韓国には韓国のいい面も全然あるんです。たとえば文化人や困窮者に対する行政のバックアップは日本より手厚いです。公的機関の融通も日本より利きますし。でも、バブル崩壊以後の『好景気を知らない日本の若者』以上に厳しい状況にあるのが、韓国の若者たちなんじゃないかなと思いますね」

 

日本の若者たちが韓国に憧れるのは、隣の芝生が青く見えてしまっているだけ……とまではいかずとも、これでもまだまだ“マシ”というのが日本の現状なのかもしれません。

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