■コロナに立ち向かう学者たちにもエールを
実は西村長官の会見の3日前にも、陛下は五輪を強行する菅政権を諫めるようなお言葉を発信されている。雅子さまと出席された6月21日の日本学士院賞の授賞式で、陛下は次のように述べられたのだ。
「このような試練に世界が直面している今こそ、医学をはじめ自然科学、人文社会科学の学問諸分野の叡智を結集し、世界の人々が互いに力を合わせることにより、この困難な状況を乗り越え、希望に満ちた未来を築いていくことを期待します」
感染拡大や医療逼迫のリスクを訴える専門家たちの声に耳を貸すことなく突き進む菅政権の“人命軽視”ぶりに、陛下は警鐘を鳴らされたのではないだろうか。
「国民に寄り添うことを第一に考えてこられた陛下は、ワクチンも国民と同じスケジュールで接種される予定ですので、すでに開会式前に2回の接種を終えることはほぼ不可能となっています。国民のワクチン接種が間に合わないままに五輪を強行開催し、なし崩しに観客数も増やしていく政府の姿勢を強く危惧されたはずです。国民からの不安の声がまったく聞き入れられない以上、自ら動くしかない――。陛下はそう決意を固められ、長官に思いを託したのではないでしょうか」(宮内庁関係者)
長官を通じた異例の懸念表明は、陛下の「国民を守りたい」という一心からだったのだろう。開会式の予定日まで1カ月を切った。菅政権、そして組織委員会やIOCの感染防止策にはすでにほころびが生じているが、陛下の“懸念”が現実のものとならないといえるのだろうか――。
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