■陛下は記者会見でも万博に言及されず
4月6日には万博会場内で、引火すれば爆発の恐れがある濃度のメタンガスが検知されたことが発表された。この日はリハーサル「テストラン」の最終日で、一時、来場者の立ち入りを規制する事態に。
時事通信が3月に報じた世論調査の結果によれば、全国の18歳以上の2千人に大阪・関西万博に行きたいと思うかどうかを聞いたところ、「思う」は回答者の22.0%、「思わない」は65.3%だったという。
「税金を投入する会場整備費は当初と比べ約1.9倍の最大2350億円に上振れし、批判が上がったことも記憶に新しいと思います。
またチケットの売れ行きも伸び悩んでいます。日本国際博覧会協会は開幕までに前売り券を1400万枚販売することを目指していましたが、1カ月前の3月12日時点で、6割弱の約820万枚にすぎませんでした。チケット販売の不振は公費を投じられている万博の赤字にもつながりかねず、しかもその赤字が、どのように補てんされるのかも不透明なままなのです」(前出・皇室担当記者)
いまの状況に“4年前の東京五輪を想起させます”と語るのは、ある宮内庁関係者だ。
「コロナ禍のなかで政府が開催を強行したことに、多くの国民が反対の声を上げていました。結局、東京五輪の開会式には天皇陛下がお一人で臨席し、慣例の“祝い”という言葉を使わずに開会を宣言されたのです。
雅子さまはコロナ対策で各国首脳らが同伴者を減らしていることを勘案して欠席されています。もちろんそれも理由の1つであったでしょうが、五輪が国民の支持を受けていないことを強く意識されていたのでしょう。
両陛下は今回の万博についても、『国民は本当に開催を望んでいるのか』と、深くお悩みのことと思います。天皇陛下は2月のお誕生日に際しての会見でも、2カ月後に控えた万博について言及されませんでした」
また雅子さまにとっては、万博には苦い思い出もあるという。
「’05年の愛・地球博は、雅子さまにとって1年8カ月ぶりの地方ご公務でした。当時は適応障害の症状が非常に重かったころです。お顔の色も悪く、会場では人々からの歓声に笑顔も見せられていましたが、ふとした拍子にとてもおつらそうなご様子だったのが、おいたわしかったです」(前出・皇室担当記者)
静岡福祉大学名誉教授の小田部雄次さんはこう語る。
「戦後、日本が経済を発展させ、国際的な地位の向上を目指していくなかで、五輪や万博を皇室と国民が一体となって盛り上げていくことには大きな意義がありました。しかしいまとなっては、運営の関係機関の経済的な目的のために、皇室や国民が利用されているような状況が生まれています。
大阪・関西万博は開催にあたり、さまざまな問題が指摘されています。皇室は、国民全体のための皇室であることが望ましく、一部の企業や団体の経済的利益のために利用されてしまうと、その理想が崩れてしまいます。天皇皇后両陛下もその点を苦慮されているのではないでしょうか」
両陛下は大阪ご訪問2日目には、パビリオン「国際赤十字・赤新月運動館」も視察される予定だ。
「雅子さまは日本赤十字社の名誉総裁であり、愛子さまも日赤にお勤めです。皇后や名誉総裁というお立場と、国民の万博への反対の声との“板挟み”になっていらっしゃるのだと思います」(前出・宮内庁関係者)
雅子さまが万博会場で見せられる笑顔には、“逡巡の日々”も秘められているのだ。
画像ページ >【写真あり】05年の愛知万博で久しぶりに地方ご公務に復帰された雅子さま(他9枚)
