このうえなく透明な澄みきったスープ。ネギの香りをひきたて、口の中に上品なコクがあったかく広がっていく。しっかりとした歯ごたえ、しなやかなコシのストレート麺。子供の頃、外食でたまに連れていってもらった、高級中華のお店で出てきた「中華そば」を思わせる上品な一品。今ではお目にかかれない、赤いチャーシューとメンマはまさに昔ながらのノスタルジー。ラーメン730円。 変わり続ける原宿の街で、昭和35年6月の創業以来、変わらぬ味を作り続けている中華料理屋が「栄楽」だ。竹下通りを下った交差点の先、右角に真新しい円筒型のKDDIビルがある「原宿通り」を進んで右手、花屋さんが入ったビルの2階。 昭和の香りがただよう清潔な店構え。キャップの上にパーカーをかぶった裏原系の男の子が普通に“昔ながらの中華そば”を食べる光景は、ある意味新鮮だ。近所のダイアナ靴店、ビームスやユナイテッドアローズといった人気ショップの店員さんたちも、よくお昼を食べにやってくるという。 息子夫婦とお店を切り盛りする、おかみさんの細谷幸子さん。創業時の20代からずっとここの厨房に立ち、変わり続ける原宿の街で生きてきた。