変わり続ける街並み。今から13年前の平成7年(1995年)に「栄楽」はそれまでの1階での営業から、現在のビルの2階にお店を移す。 「うちのお客さんはみんないいお客さんだから、その人たちのためでもあるし、生活のためでもあるし。お客さんの中には店の名前を忘れても、タンメンのおばちゃん、タンメンのおばちゃんって思い出して来てくれる人たちもいたりね」 息子の隆広さんと奥さんの理恵子さんも、お店に立って20年近く。3人家族で、お店と味を守り続けてきた。 創業以来味を変えていない、秘伝のスープ。昆布か鰹節でとったような、油膜のかけらも浮いていない澄んだスープだが、なんと豚骨だけでダシを取っているという。脂っこさも臭みもないスープ。醤油味ではやわらかく、タンメンなどの塩味ではキリッといったい豚骨で、どうやったらこんな上品な味が? 「それは企業“シ”密よ!」、江戸っ子弁で笑う幸子さん。「濁らせないのは大変。毎朝、火加減に気を配りながら作ってます。スープは3人、誰が作っても同じ味が作れるようにしてあります。だけど麺を作るのは私には無理ね。機械の目盛りとか難しくって(笑)…これは息子が毎晩、夜帰ってひと休みしてから、作ってくれてます」 しなやかな歯ごたえでスルスルッとすすれる麺は、息子の隆広さんの手作り。小さい頃、父が麺打ちしているのを見ながら育った隆広さん。その日の天気、温度、湿度を肌で感じて、粉や水の量を微調整しながら、毎日毎日打っている。ていねいにローラーがけを繰り返して、コシのある麺を作ることを心がけている。