■日本では“違法うなぎ”ではないことを証明できるうなぎを見つけることが難しい
さらに、”違法うなぎ”が横行していることもうなぎの管理をより困難にする。水産庁の資料によると、令和4年漁期の国内のシラスウナギの採捕報告数量5.5トン、輸入数量5.8トン、合計11.3トンに対し、養殖業者のシラスウナギ池入報告数量は16.2トン。 4.8トンの出どころ不明、つまり密漁や無報告のシラスウナギがいるのだ。
「このような違法な漁獲や流通は、漁獲量と漁獲努力量の把握を困難にします。 漁獲量と漁獲努力量を把握することができなければ、ニホンウナギをどの程度漁獲しても良いのか、基準を設定することができません。
さらに、輸入されているシラスウナギのほとんどは香港からの輸入です。香港から輸入されるシラスウナギの大部分は台湾など採捕国から密輸されたものと考えられます。令和4年漁期の輸入量5.8トンのうちの大部分が香港へ密輸されていたとすれば、日本の養殖場へ池入れされた16.2トンのうち、7割程度に当たる10トンが違法行為を含むルールに反した採捕・流通を経ていたことになります」
消費者としては、食べるにしても“違法”ではないうなぎを選びたいところ。どうしたら、見極めることができるのか?
「流通情報の追跡が可能であること、いわゆるトレーサビリティが確立されているうなぎを探すということになりますが、現実的にトレースができているうなぎは残念ながらほとんどおらず、ルールを守って流通しているうなぎかどうかを消費者が判別するのは難しいのです。結果として、うなぎを消費することを通じて、消費者は間接的に違法行為に加担し、犯罪組織に資金源を提供してしまっている状況です」
つまりうなぎを食べる以上、“違法うなぎ”を食べている可能性を否定できないのだ。
「まずは知って考えることが重要です。とはいえ、うなぎの問題は生態も人間との関係も複雑で、理解することは簡単ではありません。この問題を解決しようとNGO、科学コミュニケーター、専門家らと協力して、ニホンウナギの現状について楽しく学ぶことができる”うなぎ生き残りすごろく”を作りました。無償貸与していますので、お役立てください。
うなぎの問題を解決するにあたって、うなぎのことを知る以外に、もう一つ重要なことがあります。食品について考えるとき、安心と安全と価格だけではなく、資源と社会の持続性について考えることです。自分が食べている食品が適切な資源管理、流通管理を経て供給されているかどうかという基準も含めて食品を選ぶことで、資源の持続的利用と、密漁、密輸、奴隷労働など違法行為の抑制に繋がります」
うなぎが絶滅してしまっては、2度とうなぎを食べることも、誰かに食べさせてあげることもできない。心から安心してうなぎを食べることができるようになるために、国も業者も消費者も考えなければいけない時期が来ているようだ。
【教えてくれたのは…】
中央大学法学部教授・海部健三さん
著書に『結局、うなぎは食べていいのか問題』(岩波書店)
研究室ブログ→https://kaifu-lab.r.chuo-u.ac.jp/wp/
「うなぎいきのこりすごろく」はこちらから閲覧可能→https://www.nacsj.or.jp/unagi_game/index.html