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6月末、国立がん研究センターが全国47都道府県の、がん罹患状況を公表して話題を呼んでいる。’12年に新たに、がんと診断された患者数は全国で約86万5,000人だったという。同センターは集計したデータを解析し、がんの部位ごとに都道府県別・男女の罹患率を算出したのだ。

 

その結果、“がんにならない県”として、著しく目立っているのが鹿児島県。乳がん1位、大腸がん1位、さらに胃がんや子宮がんでも2位で、トータル(全部位)で1位という驚きの結果に!この数字は、当の鹿児島県民たちにとっても予想外だったようだ。

 

鹿児島県では8年前から「がん対策推進計画」を行っている。本誌は今回の結果をふまえて、取材を申し込んだのだが、鹿児島県庁保健福祉部健康増進課の担当者は困惑しきりだった。

 

「鹿児島が“がんにならない県”の1位だったことは、私たちも新聞の報道で知りました。集計は国立がん研究センターさんが行ったものですので、こちらからはなんと申し上げていいものか。食生活との関係ですか?さつまいもは全国で生産量1位、鶏肉生産量も1位ですが、がんとの因果関係については把握していません……」

 

だが実は、かなり前から鹿児島の食生活は、がんを予防する効果が高いのではないかという研究が続けられている。

 

「’02年に鹿児島大学の教授が、“黒酢に抗がん作用がある”という実験結果を明らかにしています。さらに’13年にも鹿児島大学医学部の研究チームが“黒酢には皮膚がん細胞の増殖を抑制する効果があった”という内容の研究結果を発表しました」(医療ジャーナリスト)

 

黒酢が販売されるようになったのは40年ほど前だというが、いまや鹿児島の特産品としても有名だ。

 

「’02年には、鹿児島大学がさつまいもの表皮のアントシアニンに、がん細胞の増殖抑制作用があることを確認したと、報じられています。このアントシアニンは抗酸化物質のポリフェノールの一種で、奄美すももなどにも豊富に含まれています」(前出・医療ジャーナリスト)

 

また、西台クリニック院長で、がんの食事療法に関する著書を多く持つ済陽高穂先生は次のように分析する。

 

「鹿児島もそうですが、がん罹患率の低い県は、野菜の摂取量が比較的多いですね。食生活以外にも、がん予防で重要なのは生活習慣です。入浴をしっかりして37度前後の体温を保つことは、がんを寄せ付けない秘訣です。そういう意味では“温泉王国”である鹿児島県は、がんになりにくい環境だといえるでしょう」

 

環境省の統計によれば、湧出量で全国3位、さらに“温泉を利用している公衆浴場数”では全国2位と、県民が気軽に温泉を利用しやすいのだそう。モンゴル国立医科大学教授でグローバル温泉医学研究所所長の松田忠徳さんは言う。

 

「他県でしたら『◯◯温泉は絶景』とか、施設の話題を話す人が多いのですが、鹿児島では『◯◯温泉は××に効く』とか、効能について語り合うのです。鹿児島市内にもたくさんの銭湯がありますが、ほとんどが温泉で、なかにはお湯を飲むことができるところもあります。他県に比べれば、温泉使用料は総じて安く、多くの県民たちが愛好しています」

 

松田さんの研究によれば、温泉はがん予防に効果があるという。

 

「これまで大分や北海道など、7つの温泉地で350人を対象にして、採血検査を行いました。老化や病気の主な原因は、体内で酸素が変化して生じる活性酸素です。強い紫外線やストレスなどで増加して、がんなどの病気を招きますが、温泉にはこの活性酸素を減少させる作用があるのです。お湯そのものの力もありますし、リラックスすることもがん予防に役立っていると思いますよ」

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