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いまが流行のピークの風邪。病院で処方された薬のなかに、抗菌薬(抗生物質)があった人も少なくないだろう。でもちょっと待って!その薬、ほとんど消化されずに“だいたいウンコ”になってるって、知ってます!?

 

教えてくれたのは、国際感染症センターの忽那賢志先生。そもそも抗生物質とは、細菌を殺したり増殖を抑えたりする抗菌薬の一種。どの細菌に効くかによって「ペニシリン系」や「キノロン系」など、細かく分類されている。

 

「たとえば女性に多い膀胱炎は、大腸の中の細菌が逆行して尿道に感染することで起こりますが、その治療などでも使われます」(忽那先生・以下同)

 

しかし、なかには意味なく処方され続けている抗生物質も……。それこそが、今回忽那先生が一刀両断する「経口第3世代セフェム」だ。

 

「セフェム系は開発順によって世代があり、私はそのなかの第3世代、さらに飲み薬(経口)のことを『DU(だいたいウンコ)と呼んでいます』

 

その理由はなんといっても吸収率の悪さ。

 

「同じ第3世代セフェムでも、点滴は治療効果も十分実証されていて、私も肺炎や腎盂腎炎などの治療によく使っています。ただ、点滴の場合の使用量は1回で1,000ミリグラムです。これに対して、飲み薬の場合は1錠100ミリグラム程度。これを成人には通常1日3錠処方するので、その時点ですでに量が足りていないのです。さらに、経口だと消化管で吸収されて血液中に入る割合が非常に低く、ひどいものだと10%台。飲んでもほとんどが便として出てしまうため、経口第3世代セフェム=だいたいウンコ、という『DUの定理』(by 忽那先生)が成り立ってしまうのです!」

 

そして、このDUが風邪患者に多く処方されているのも大きな間違いだという。

 

「風邪というのは、鼻や喉といった上気道の炎症の総称で、原因のほとんどがウイルス性。いっぽう、抗生物質は細菌に対するクスリなので、ウイルスには効きません。それなのに、風邪に抗生物質が処方されることは珍しくなく、なかでもこの第3セフェムが非常に多いんです」

 

さらにタチが悪いことに、DUが副作用を起こす場合もある。

 

「たいして効きもしないくせに、いっちょまえに腸内細菌叢のバランスを乱すことがあるのです。それによって特定の悪い菌が増えてしまうと、下痢を起こして偽膜性腸炎を引き起こすことも。多くは軽症で済みますが、まれに重症化し、亡くなる方もいます」

 

もうひとつの問題は、体内で抗菌薬が効かない菌(=耐性菌)が増えてしまうこと。

 

「実際に膀胱炎や腎盂腎炎などの感染症を起こしたときに、その原因菌が耐性菌になってしまうことがあります。すると治療のための抗菌薬の選択肢が少なくなったり、最悪、使える抗菌薬がなくなる可能性も。感染症治療に限らず、手術も分娩も、化学療法も、安全にできなくなるのです」

 

さらに子どもの場合、低カルチニン血症を起こすこともあるという。その症状は全身の倦怠感、筋力低下、不整脈などで、心筋症や急性脳炎、はては突然死にまでつながることもある。もはや、笑いごとではない。

 

「そう、感染症業界では『DU』を流行語大賞にしたぐらいです。言い出したのは私ですが。でも、診察を受ける皆さんにこそ『ストップ、DU!』と知ってほしい!」

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