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「目の中の水晶体は、近くを見るときはふくらみ、遠くを見るときには縮むことでピントの調整を行いますが、年を取ると、水晶体の弾力が失われて、近くにピントを合わせづらくなり、文字がかすんで見えます。40代半ばですべての人に老眼は始まりますが、最近はスマホやパソコンの使いすぎのせいか、40代前半から老眼を訴える人も出てきます。また、白内障は老眼と並んで進行していきます」

 

そう目が衰える仕組みを解説するのは、『「よく見える目」をあきらめない』(講談社+α新書)の著者で、みなとみらいアイクリニックの荒井宏幸医師。いったん老眼になったら元に戻らない、と思いがちだが、あきらめるのは早いという。

 

「かつて老眼の矯正方法はメガネだけでしたが、遠近両用コンタクト、目の表面の角膜にレーザーを当てて視力を矯正する『レーシック』、さらには水晶体を摘出して眼内レンズを入れる手術などが登場しました。目の不調を訴える人は、近視や乱視、老眼や白内障などを複合的に患い、要因はひとつではありません。そこで、最近は遠くのものも近くのものも見える『多焦点眼内レンズ』を用いて手術を行うのが主流になってきています」(荒井先生・以下同)

 

老眼と多焦点眼内レンズに関する詳細な統計はまだないが、白内障で多焦点眼内レンズを用いた手術は、’08年から厚生労働省の先進医療として適用されたため、手術を受ける人は年々増えている。厚労省によると、’16年7月1日〜翌年6月30日までの1年間に555の医療機関で、前年より3,000件増の1万4,433件の手術が行われた。平均的な技術料は58万円となった。

 

白内障に対する先進医療として手術を受けると、手術費用は自己負担だが、手術前後の検査や診察は保険診療で受けることができる。生命保険などの先進医療特約に加入していれば、費用は保険会社から医療機関に全額支払われる。

 

しかし、「老眼」での治療だと全額自己負担になるから注意が必要だ。費用は片目50万〜100万円と医療機関によってかなりの差がある。みなとみらいアイクリニックでは、レンズ代込みで片目80万円。

 

「多焦点眼内レンズ」を使った手術は、年齢的には80歳を超えても、過去にレーシックの手術を受けた人でも可能というが、やはり高額なので失敗だけは避けたい。

 

そこで、手術を受ける前に、しっかり理解しておきたいのが多焦点眼内レンズの「メリット・デメリット」。

 

メリットは、遠くのものも近くのものも、メガネなしで見えるようになることだ。近視用、老眼用とメガネをかけ替えるのが面倒という人には、煩わしさがなくなる。

 

「当クリニックでは、手術を受ける人の男女比は、男性が1に対し、女性が2と、女性のほうが多いです。『老けた印象を与えることから、老眼鏡をかけたくない』というのが理由です」

 

また、調節力を失った水晶体の代わりに眼内レンズを入れるので、回復した視力は半永久的に続くため、生涯困ることはない。もちろん、白内障になる心配もない。

 

デメリットは、夜間や暗がりで街灯や信号、車のライトなどがにじんだり、まぶしく感じたりすることがあることだ。また、30〜40センチの距離で焦点が合うように設計されているので、それ以上近づけると、見えにくいことがある。人によって見え方に個人差があるという。

 

「長距離トラックやタクシーの運転手など、車の運転が欠かせない仕事の人にはお勧めしません。ある男性は、『裸眼でゴルフのボールが見えて携帯や新聞が読めれば、仕事で細かい数字を見るときだけ老眼鏡をかけてもよい』、ということで、多焦点眼内レンズを選びました。また、裁縫が好きという高齢の女性は、『夜は外出しないので、針の穴に通す糸が見えればいい』と。このように、多焦点眼内レンズを選ぶかどうかは、見えることで何をしたいのか、がポイントになります」

 

また、たとえ手術を受ける気満々の人も、視力は裸眼で1.5あり、角膜や水晶体に異常がない場合は、「手術をするのはまだ早い」と、断るときもあるという。一度レンズを装着したら、交換するのは困難で、水晶体を元に戻すことはできないため、十分に説明をして、患者が納得したうえで手術に進む。

 

「『多焦点眼内レンズ』は、今は30種類ぐらいあり、日々性能の高いレンズが開発されています。その人の目に合ったレンズを選ぶため、患者さんには、生活スタイルや習慣を入念にうかがって、相談のうえで決めます。費用が高額なので、納得がいかないときには、セカンドオピニオンを求めて何軒か病院に通うのもいいと思います」

 

老眼鏡から解放される多焦点眼内レンズーーだが、手術を受けるかどうかは、自分のライフスタイルや、得た視力で何をしたいのかを、よく検討してからにしよう。

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