「『視力がいいから大丈夫』と思っていても、40歳以上の20人に1人は、日本の失明原因第1位の眼の病気、緑内障にかかっている可能性があります。私のクリニックでも『買い物をするとき値札が見えづらい……』と来院された女性が緑内障だったというケースがありましたが、そうした自覚症状はごく少数。気付かないうちに進行し、見えなくなる寸前に発見、というケースもあります」
そう警鐘を鳴らすのは、たじみ岩瀬眼科の院長で、日本緑内障学会理事の岩瀬愛子先生だ。6月7日は「緑内障を考える日」。緑内障とは、視神経に障害が起きることで、眼で捉えた映像がうまく脳に伝わらず、じわじわと視野が欠けていく病気。
日本緑内障学会と岐阜県多治見市が’00~’01年に実施した疫学調査では、無作為抽出で選ばれた40歳以上の男女約3,000人のうち、5%にあたる20人に1人が、緑内障に罹患していることが判明した。しかも、9割は罹患の事実に気付いていなかったというから驚きだ。
「緑内障の発見が遅れる原因のひとつは、視野の一部が欠けていても見えるほうの眼で補うので見えていないことに気付かないから。視野が欠けていても、視力を測ると1.5だったりするのです」(岩瀬先生・以下同)
岩瀬先生は「40歳を過ぎたら一度は、限定検査、眼圧検査、そしてできたら視野検査の3つの検査を受けてほしい」と呼びかける。
費用は、医療機関や加入している保険によっても異なるが、保険適用の場合はトータルで約5,000円以上は見込んでおこう。
こうした検査をセットで受ける「眼科ドック」もおすすめだ。項目によっても異なるが、費用は1万5,000円~2万円程度。問題がなくても、最低でも5年に1度のペースで受けておくとよいという。
気になるのは、検査で緑内障が見つかった場合の治療法。
「緑内障になったからといって、すべての人が失明することはありませんし、治療の継続が重要です。基本的には、症状に応じて、点眼薬を1~3種類ほど組み合わせて治療します。いったん障害された視神経を元に戻すことはできませんが、進行を止めることは可能。また、重度になれば、レーザー治療や手術をすることもあります」
また、緑内障だとわかると「車の運転ができなくなる」と検査を躊躇する人もいるかもしれないが……。
「緑内障と診断されても、ただちに免許を剥奪されるわけではありません。逆に、毎日の生活や仕事で車が必要な方にとっては“早期発見”が命綱となるでしょう。緑内障の進行を止めたうえで、視野が欠けている部分をしっかりと自覚。見えるほうの眼で補いながら安全運転を心がければ、事故は避けられるということです」