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「認知症とは、脳神経細胞の劣化によって起こる症状です。あとは脳血管障害、糖尿病を放置していたなど、複合的な要因も関係してきます。65歳以上、5つ年を取るごとに認知症になる危険性は2倍に。90歳を超えたら、6~7割の人は認知症になるといわれています」

 

そう語るのは認知症予防・治療の第一人者である朝田隆先生。加齢と認知症発症リスクは比例していて、年を取るほど発症率が高くなってしまうのは仕方ないことのよう。’12年時点で、日本の65歳以上の認知症推定人口は約462万人、軽度認知障害(MCI)は約400万人といわれている。

 

「認知症は進行速度が遅くなることはあっても健常に戻ることはありません。しかし、MCIは改善が期待できます。MCIと診断された方の26%は健常に戻るともいわれていますので、早期に対策を始めることをおすすめします」

 

「早期受診が急務」ということはわかったが、親を病院へどのようにして連れていけばいいのか。その難問を解決すべく、認知症やMCIに関する電話相談などを行っている「認知症の人と家族の会東京都支部」代表の大野教子さん、副代表の松下より子さんに話を聞いた。

 

「認知症には『自分が自分でなくなっていくのでは?』というネガティブな印象があるため、病院へ連れて行くのに苦労されているご家族からの相談は多いです」(大野さん)

 

やはりこれは、多くの人が悩む問題のようだ。自らも介護経験がある2人が教えてくれたのは、“今後の介護のキーパーソンになる人物が、無理やり病院に連れて行くのはNG”ということ。

 

「『娘までもが私の敵か!』という意識になり、信頼関係がなくなってしまいます。将来的に介護の主役となる方は、最初の段階で病院へ行こうと強くすすめる立場でないほうがいいのかも。お父さんやごきょうだいがいれば連れて行ってもらうのも一つの手です」(大野さん)

 

キーワードは“信頼関係”。たとえば、健康診断などと本人に嘘を言って連れて行くのも、信頼を損なう恐れがあるので気をつけたほうがいいとのこと。そして、配偶者の存在は特に重要だという。

 

「夫婦は当然、相手を大事に思う気持ちが強いもの。元気なほうが『最近、調子がよくないんだが、一緒に病院に行かないか?』と誘って一緒に行くという成功例はよく聞きます」(松下さん)

 

そのほかに、日常で気をつけるべき“家族の心得”は次の5つ。

 

【1】早めに受診し、適切な治療を!

 

認知症が疑われたら、まず専門医を受診すること。適切な治療や介護を受けるには、アルツハイマー型認知症など、どのタイプの認知症かを診断してもらうのが不可欠。

 

【2】介護保険など、サービスを積極的に利用しよう!

 

家族だけで認知症の人を介護することは難しいので、介護保険等のサービスの利用は積極的に。サービスは家族の息抜きだけでなく、本人が社会と接することができる大事な機会。

 

【3】サービスの質を見極める目を持とう!

 

介護保険サービスは利用者や家族が選択できるのが利点。質の高いサービスを選択する目が必要。トラブルがあったときは泣き寝入りせず、冷静に訴える姿勢を持つことも大切。

 

【4】恥じず、隠さず、ネットワークを広げよう!

 

認知症の人の実態をオープンにすればどこかで理解者、協力者が現れるはず。公的な機関や私的なつながり、ネットの情報も上手に使い、介護家族の思いを訴えることも必要だ。

 

【5】往年の“その人らしい日々”について考えよう!

 

認知症だからといって、その人の人生を否定してはいけない。やがてくる人生の幕引きも考えながら、その人らしい人生が続けられるよう、家族で話し合いの機会を持つこと。

 

「もしかして認知症?」という疑問を感じたら、何よりもまず、すぐに病院へ行き受診を。

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