いよいよ冬本番。今年も風邪などの感染症に注意が必要なシーズンが到来したが、中高年がとくに気をつけたいのが「肺炎」だ。
「一般的に肺炎といえば、肺炎球菌をはじめとする細菌に感染して起こる『細菌性肺炎』を指しますが、“肺の炎症”全般としてとらえれば、ほかにもさまざまな疾患が。なかでも『非結核性抗酸菌症(肺MAC症)』や『過敏性肺炎』は、日々の生活の中にも、原因が潜んでいるので要注意です」
そう語るのは、『肺炎がいやなら、ご飯に卵をかけなさい』(飛鳥新社)の著者で、これまで30年以上呼吸器の診療にあたってきた日赤医療センターの生島壮一郎先生。とくに増加傾向にあり中年女性に多いものとして生島先生が警鐘を鳴らすのが「非結核性抗酸菌症」。
「あまり耳慣れない病気ですが、結核菌と同じ『抗酸菌』に感染して肺に病巣ができる病気のことで、抗酸菌の中でも『MAC』という菌群に感染して起こるものを肺MAC症といいます」
菌自体は土や水回りなど身近な場所に生息しているが、気管支や肺の防御能が弱った場合に生じる。
「明確な科学的根拠はありませんが、男性より体が小さくて痰を吐き出す力が弱いこと、さらに、水仕事の機会が多いことも、中高年の女性に多い原因の1つではないかといわれています。ほとんど症状がない方も多く、結核のように、人から人へ伝染することはありません。しかし、長年の経過で徐々に悪化し、肺や気管支に傷を残す原因になることもあるので注意が必要です」
感染症以外でも「過敏性肺炎」はアレルギー性の肺炎。高温多湿な日本の夏に、トリコスポロンと呼ばれるカビによって起こる「夏型過敏性肺炎」や、エアコン、加湿器に生じたいくつかのカビによって起こる「換気装置関連過敏性肺炎」。羽毛に付着した特定のタンパク質によって起こる「鳥関連過敏性肺炎」などがある。
では、日常生活で肺の炎症を予防するにはどうしたら? というと、「『気道クリアランス』を保つことです」と生島先生。
「気道クリアランスとは、大気中に無数に存在する細菌やカビ、ウイルスを排除するべく体に備わっている防御機構の1つです。のどの奥にある気管支の内側の粘膜には細かい線毛がびっしりと生えていて、異物が入ってくるといっせいに上へ上へと動いて、その異物を押し出そうとしてくれます。さらに線毛の表面には、まるで川のように粘液が流れており、これが異物をからめとり、排除してくれているのです。この気道クリアランスの機能が低下すると、細菌やウイルスが肺に入り込んだ際に、増殖しやすくなります。肺炎を防ぐ関門、まさにそれこそが、気道クリアランスなのです」
非結核性抗酸菌症の発症が排痰と関係するといわれるのも、雑菌やホコリなどが混じった痰を吐き出せないでいることで、この「気道クリアランス」が低下することが関連していると考えられている。
肺炎予防の第一歩は、「のどケア」から始めよう。「のどケア」と聞いてまず思い浮かぶのは、そう、うがいだ。
一般的には風邪の予防法として知られているが、「気道クリアランスによって気管からのどまで上がってきた異物を出す、という側面もあるんですよ」と生島先生。巷では、うがい薬をはじめ、塩水うがいや緑茶うがいの効果がよく比較されているが、ぬるめの水道水で十分だという。
「女性自身」2019年12月17日号 掲載