視野がどんどん奪われていく緑内障。しかし日常生活で自分の視野の異常に気づくのは「極めて難しい」と医師は語る。早期発見するために有効な手段とはーー。
「緑内障は40歳以上の18~20人に1人の割合で発症するといわれています。緑内障の原因は『眼圧が高いこと』と考える人が多いのですが、むしろ眼圧に異常がなくても緑内障になるケースのほうが大多数です。それを『正常眼圧緑内障』といい、じつに日本人の緑内障患者の8割近くが、これに当てはまります」
こう語るのは、梶田眼科(東京都港区)院長の、梶田雅義さん。『正常眼圧緑内障』は、“気づきにくい”というが、推定患者数は400万人ともいわれている。
「緑内障の症状のひとつに、眼圧が急激に上がる『急性緑内障発作』というのがあります。これは目の激しい痛みをともなう症状ですが、『正常眼圧緑内障』の場合は自覚症状がほとんどありません。『どうも視野に欠損ができて、見えづらくなってきた』と気づいたときはすでに“末期状態”というケースが多いため、早期発見が何よりも重要なのです」
症状に気づいたときには“失明の一歩手前”という事態にもなりうる緑内障。そのメカニズムについて梶田さんが教えてくれた。
「眼球と脳をつなぐ視神経の束の通り道である『視神経乳頭』という部分が、眼圧によって狭まります。すると視神経が圧迫され、損傷したり切れたりして死んでしまい、徐々に視野が欠けてしまうのです。『正常眼圧緑内障』の場合は、眼圧が異常に高いわけではないのに、視神経乳頭に圧が集中してしまうため、眼圧を測っただけでは発見できないことが多いのです。また緑内障は、“不可逆”な病気。死んでしまった視神経は、元に戻りません。残った視野は、治療によって維持はされますが、改善はされないのです」
では、どうすれば早期発見できるのか。梶田さんいわく、日常生活の中で初期症状を自覚することは難しいと語る。
「“視野が欠ける”という症状はすぐに気づきそうなものですが、人間は視野が多少欠けていたとしても、脳やもう片方の目を使って、視覚情報を補ってしまう。結局、大幅に視野欠損が進んでからでないと自分では気づけないのです。そのため、意識的にセルフチェックを行うことも有効な手段だと思います」
梶田さんが、簡単にセルフチェックできる方法を教えてくれた。
「方眼紙など、マス目のある紙の中央の一点を片目ずつで見つめると、緑内障であればマス目が欠けたり、ぼやけて見えない部分があるはずです。家族に緑内障の患者がいる人、近視の人に多いといわれていますが、はっきりとした原因はわかっていないため、予防も難しいのが緑内障。このセルフチェックで少しでも違和感があったら、眼科で検診を受けるようにしてください」
「女性自身」2020年11月17日号 掲載