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全国でもっとも高い青森県の乳がんの死亡率は、全国でもっとも低い山形県のおよそ2倍もあるという。地域差が生まれる理由を専門医に聞いた。理由を知ると、必要ながん対策も見えてきたーー。

 

「一生のうちに2人に1人はがんになりますが、実はがんのかかりやすさや死亡率で各都道府県には顕著な差があります。この地域差を把握することで、自分が住む地域で当たり前になっている生活習慣を見直したり、がんに対する意識を高めたりすることが重要です」

 

そう語るのは国立がん研究センター全国がん登録室の松田智大室長。’16年にがん患者の情報を各自治体が届け出をして、国が一元で管理する「全国がん登録」が始まって5年になる。

 

「スタート当初は、届け出をする自治体でも、熱心な県とそうでない県があり、小規模な医療機関の数字の漏れもありました。しかし、年々、データの精度が増していて、最新のものは十分に信頼に足るデータとして、実態を捉えていると言っていいでしょう」(松田室長)

 

6月には最新(’18年)の罹患率が報告されたばかり。そこで本誌は、「胃がん」「子宮がん」「すい臓がん」の10万人あたりのがんの死亡率と罹患率を、都道府県別にベスト5とワースト5を紹介。

 

【胃がん】日々の食塩の摂取量が多いと罹患リスク高

 

〈どんながん!?〉:ピロリ菌の感染、喫煙、高塩分食がリスクを高める。40歳以上で2年に1回の「胃部X線検査」を推奨。死亡者は年々減少傾向にある。

 

塩分の摂取量が多いと、ピロリ菌が生息しやすい環境に。秋田県民の塩分摂取量は1日あたり10.6グラムで、全国平均の9.9グラムよりも多い。一方、検診受診率が高いわけでも、塩分摂取量が低いわけでもない沖縄県をはじめ九州地方は罹患率、死亡率とも抑えられ、最下位の秋田県の半分以下に。なにか別の要因があると考えられている。

 

「胃がん」「子宮がん」「すい臓がん」都道府県別「女性のがん」傾向
画像を見る ※死亡率は国立がん研究センター「全国がん死亡データ(2019年)」より本誌作成。数値は人口10万人に対する75歳未満年齢調整死亡率 ※罹患率は厚生労働省「都道府県別がん罹患データ(2018年)」より本誌作成。数値は人口10万人に対する罹患率

 

【子宮がん】ウイルスの感染と生活習慣が要因に

 

〈どんながん!?〉:ヒトパピローマウイルスの感染が関連する子宮頸がん、エストロゲンのほか生活習慣が要因となる子宮体がんに分類される。検診は頸がんのみ。

 

過去2年の子宮頸がん検診の受診率(’19年、20歳以上)は41.8%と全国3位の沖縄県だが、子宮体がん、子宮頸がんともに罹患率が高く、全国ワースト1の死亡率につながっている。四国・九州地方は、以前から婦人科系のがんの罹患率が高いことが示されている。文化や生活習慣などが深く関係していると考えられている。

 

【すい臓がん】男女差は少ない。糖尿病と関係か

 

〈どんながん!?〉:症状が出にくく早期発見が困難。血縁に罹患者がいること、糖尿病、喫煙などはリスクを高める。検診はないので、気になる場合は医療機関へ。

 

がんの罹患数は、男性が女性の2〜3倍ほど多いが、すい臓がんは男女にさほど差がないのが特徴。地域性はさほど見られないが、鳥取県や山形県は発見から治療・回復までの医療ネットワークが充実。すい臓がんと関連が深い糖尿病患者が全国1位の香川県、糖尿病による死亡率がワースト1の青森県は死にやすい県となっている。

 

「罹患率は生活習慣や環境などが反映されます。一方、死亡率はそれに加え、病院へのアクセスのしやすさ、住民の健康に対する意識の高さ、検診で早期発見できているかどうか、再検査の受診率、診断から治療に至る医療体制などで差がつく可能性があります」

 

順位に一喜一憂することなく、データから読み解く傾向と対策をしっかり心がけよう。

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