■腸内細菌と発酵食品の持つ酵素を取り入れよう
それでは、自分がもともと持っている酵素では期待する健康効果が得られない場合は、どうしたらいいのだろう。
「私たちの腸には約1,000種類、約100兆個もの腸内細菌がいます。そうした腸内細菌たちも独自の酵素を持っていますが、実は私たちは彼らが持つ酵素も使うことができるのです。また、納豆などの発酵食品には納豆菌などの微生物が含まれていますが、これらの微生物たちも酵素を持っており、私たちはこれらの酵素も活用できます。自分の体に特定の善玉酵素がない人だけでなく、そもそも人の酵素だけでは分解できないものもあります。ですから私たちはみんな、“人の作り出した酵素”ではない腸内細菌や発酵食品の持つ酵素の力を活用しているわけです」
これほど大切な酵素が、もしなかったらどうなるのだろう。
「たとえばデンプンは、酵素がなければ塩酸などの劇物を使い、高熱をかけないと分解できません。また、酵素なしでは1000年以上かかる分解時間が、酵素があるとわずか1時間ほどで済むこともあります。体にやさしい仕組みで素早く分解できるのは、まさに酵素のおかげなのです」
ただし、酵素には少々わがままな面があり、特定のビタミンやミネラルなどがある、自分好みの環境でないと働いてくれないこともあるという。
「ですから、善玉酵素がよく働く環境を作るために何を食べればいいのか、酵素と食事成分の食べ合わせが大切になってくるのです」
従来の腸活ではヨーグルトを食べればそれでいいと思っていたが、どうやらそれだけでは足りないということらしい。
「ヨーグルトが体にいい理由のひとつは、食物繊維を分解するステップで必要となる、乳酸菌やビフィズス菌を持っているからです。食物繊維は私たちが持つ消化酵素では分解できず、腸内細菌や発酵食品が持つ酵素を活用して分解し、短鎖脂肪酸を作ります。そして、短鎖脂肪酸は腸のエネルギー源になることで腸を元気にし、さらに腸内を悪玉菌や病原体が嫌う酸素の少ない状態にしてくれます。このとき、もともと腸内にいる乳酸菌やビフィズス菌にも働いてもらえば、効果はさらに上がるでしょう。そのために、彼らのエサとなる『発酵性食物繊維』を食べ合わせることが大切なのです」
発酵性食物繊維とは、腸内細菌の酵素によって発酵されやすい食物繊維を指す。最近注目を集めるもち麦や小麦ブラン、オートミールなどがその代表だ。
「発酵性食物繊維を含むオートミールと、乳酸菌やビフィズス菌を含むヨーグルトの食べ合わせが、腸内環境の改善にはピッタリ。腸内環境が整うと、脳にもよい影響があることがわかっていますから、ぜひ食べ合わせを意識した“新しい腸活”に励んでみてください」