食事と薬の組み合わせに思わぬ落とし穴が(写真:アフロ) 画像を見る

「食欲の秋真っ盛り。おいしいものに手が伸びてしまいますが、食材のなかには薬との相性がよくないものもあるので注意が必要です」

 

そう警鐘を鳴らすのは、薬剤師の宇多川久美子さんだ。たとえば、アイスクリームやプリンといったスイーツ。「季節限定」の商品なども出そろうが、これらはかぜ薬の効き目を弱めてしまうことがあるという。

 

「かぜ薬に含まれるアセトアミノフェンは糖に付着しやすく、甘いものと一緒に取ると、薬の効果を低下させてしまうことがあります。その結果、痛みが取れない、熱が下がらない、という事態を招くことも」(宇多川さん・以下同)

 

この時季に気をつけるべき組み合わせはほかの食材でも見られる。今回は主な例を宇多川さんに解説してもらった。食材と薬の相性をきちんと把握しておこう。

 

これから気温が下がってくるのにしたがって、私たちの体を温めてくれる食材として活躍するのがとうがらし。ただし、鎮痛作用のあるアスピリンやイブプロフェンとの組み合わせには気をつけたい。

 

「私たちの胃は粘膜から胃液を出して食べたものを消化していますが、この働きはアスピリンやイブプロフェンによって抑制されてしまうのです。すると、胃が荒れやすくなる。そこにとうがらしやにんにくといった刺激物を取ると、胃が過度に刺激されてしまい、痛みやむかつきが起こりやすくなるのです」

 

薬が効きすぎてしまう相互作用をもたらす組み合わせもある。宇多川さんが例として挙げるのは鼻炎薬。ブタクサなどの花粉が舞っているなか、「秋の花粉症」でアレルギー性鼻炎に悩まされる人も少なくない。

 

「対策として、鼻炎には甜茶を飲むとよいともされていますが、抗ヒスタミン薬と同時に摂取すると、アレルギーを抑制する作用が出すぎてしまい、目が回ったり、手足のしびれなどにつながることがあります」

 

秋の味覚の代名詞ともいわれるサンマも、食べ合わせのリスクにヒスタミンが関係しているという。

 

「赤身魚に含まれるヒスチジンという成分は、葛根湯の成分によってヒスタミンと同様の作用をするようになります。サンマと葛根湯を同時に摂取すると、吐き気などのアレルギー症状を催すことも」

 

サンマのほか、ブリ、マグロ、カツオといった魚にもヒスチジンが含まれている。

 

「かぜのひきはじめに飲まれる方も多い葛根湯ですが、ドラッグストアなどで手軽に購入できるメリットがあるいっぽう、使用上の注意を十分に理解していない人も少なくありません」

 

秋はきのこ類も豊富に出回る。低カロリーで食物繊維が豊富なのは魅力だが、薬との相性で特に気をつけたいのはまいたけだ。

 

「まいたけは血糖値の急上昇を防いでくれる食材です。血糖降下薬を飲んでいる人がまいたけを食べすぎると、血糖値の急降下から低血糖に陥るリスクがあるのです」

 

リスクを避けるためには、薬を服用する際に薬剤師の指示、薬品の用法・用量にきちんと従うことが基本であると宇多川さんは話す。寒さから体調トラブルも増えてくる季節。思わぬところで不調を招く原因を作ってしまうことのないように注意したい。

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