「会社の健康診断などでは、50代以上の半数以上の人が難聴(聴力検査で20デシベル以上は難聴とされる)と診断されることもあります。けれど、補聴器を用いるほどではないこともあり、放置している方が多いのです」
『1万人の耳の悩みを解決した医師が教える 耳鳴りと難聴のリセット法』(アスコム)が話題になっている、医学博士で馬車道木村耳鼻咽喉科クリニック院長の木村至信先生は語る。
近年の研究では、難聴や耳鳴りが認知症のリスクを高めることがわかってきた。軽度の難聴でも約2倍、重度になると約5倍にもなるという。
「難聴によるコミュニケーションの機会の減少も認知機能の低下につながります。難聴になると社会との関わりが狭くなり、活発な脳の活動を促す会話の機会が減ることに。認知症のリスクを高めるだけでなく、うつにつながることもあります」(木村先生、以下同)
ただ、聞こえが悪くなったと感じた人の多くは、「どうせ病院に行ってもよくならない」「補聴器をつけるしかないから」とあきらめている。しかし、ほったらかしはNGだ。
■耳ぎょうざのままで1分、これを1日3回行う
多くの臨床データをもとにして、木村先生が考案した難聴のリセット法を紹介しよう。
今回紹介するのは「耳ぎょうざ法」。手を使うだけの簡単なメソッドだ。手に息を吹きかけて温めたあと、手で耳全体を前に折り曲げ、耳をふさぐ。“耳ぎょうざ”のままで1分続けて(写真参照)耳から手を離す。これを1日3回行うのみ。
「耳を閉じるときは強く圧をかけて、手を離すときにパッカと開けるイメージです。ただ、長時間閉じてはいけません。長くやりすぎたり、耳ぎょうざの状態で枕などで固定して寝ると、耳の中が蒸れ、外耳炎になることも」
耳ぎょうざのメカニズムは、
「この状態にすると、外からの圧がなくなります。そこで耳を開放すると外気が一気に入るので鼓膜が刺激され、血流も一気に加速するため鼓膜が動きやすくなります」
この方法のほかに、
【1】あくび耳抜き法
あくびをして口の中に息をため、息を吐く前に口を閉じ鼻をつまみ、耳から空気を抜くように息を鼻に集め、耳から空気が出たら手を離す。体の中から鼓膜を動かす。
【2】アオアオ発声法
ア・オ・ア・オと発声することで鼓膜の内外の圧を整える。
【3】耳マッサージ法
耳全体をぐるぐる回したり、引っ張ったりすることで、頭痛・不眠・倦怠感などの不調を和らげる。
なども有効で、これらをセットで行うとより効果的だ。
耳の聞こえが気になる人は、今からでもすぐに試してみてほしい。