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「9月に入り東京都では1日あたりの患者数が、統計報告が開始された1999年以来過去最多を記録するなど、マイコプラズマ肺炎の感染が広がっています」(医療ジャーナリスト)

 

国立感染症研究所の最新39週目(9月23日~9月29日)のデータによると、1医療機関あたりの患者数は全国で昨年同時期と比べ41倍と大幅に拡大している。

 

また、都道府県別では、福井県、埼玉県、岐阜県、東京都、愛知県、京都府、広島県、兵庫県、大阪府など、人が集中する人気の観光地とその周辺地域が多くなっている。

 

マイコプラズマという細菌が引き起こすマイコプラズマ肺炎は、風邪や新型コロナウイルスなどと同様、飛沫や接触によって感染を拡大させていく。

 

「初期症状には発熱、倦怠感、頭痛、咳、喉の痛みなど、風邪と似たものが多い。

 

特徴的なのが、しつこく乾いた咳といつまでも続く喉の痛みです。

 

病名に『肺炎』とつきますが、症状は普通の肺炎に比べると比較的軽いことが多く、かかっても気づかない場合もあります」

 

こう説明するのは、川崎医療福祉大学医療福祉学部子ども医療福祉学科特任教授の尾内一信先生。

 

では、なぜ今年は過去最多といわれるほど流行しているのだろうか。

 

「2020年に新型コロナウイルスが現れて以来3~4年にわたって、マスク、手洗い、“3密”を避けるなどの感染対策がしっかりと行われていました。

 

これが感染症全般にとって拡大を防ぐことになり、例年注意喚起をしていたインフルエンザなどほかの感染症も流行することはありませんでした。

 

ところが、昨年5月に新型コロナウイルスが5類に移行され、感染対策を徐々に緩めてきたこと、さらにこの数年間で集団的に免疫が落ちたことで、今年になって、マイコプラズマの感染者が非常に増えてきたようです」(尾内先生、以下同)

 

現時点で感染者の多くは10代以下の子どものようだが、マイコプラズマは大人にも感染する。

 

「マイコプラズマは常に一定数の人に潜伏していると考えられており、免疫力が下がると発症し、飛沫や接触により周囲に感染拡大するという経路をたどります。

 

一般的には5~50歳の人がかかるといわれていますが、子どものほうが学校などで集団生活をしているため、最初に感染しやすく、家庭内で大人にもうつします。そのため、遅れて大人の間でも流行がやってくると考えられます」

 

さらに、感染者の5~10%は何らかの合併症を発症することがわかっている。

 

「罹患した人の中には、髄膜炎、脳炎、肝炎、膵炎、心筋炎などの合併症を引き起こすことがあります。その程度は軽症から重症まであるものの、マイコプラズマは合併症を起こしやすい感染症だといえます」

 

症状が風邪に似ているうえ、ゆっくりと現れるため、気づかないまま放置されることもあるというが、咳が長引く場合は早めに医療機関を受診しよう。

 

ちなみにマイコプラズマに有効なワクチンはないという。

 

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