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「真面目に生きていても、何かのきっかけで、一気に借金地獄に転落してしまうーー。よく『老後破産』が問題だといわれますが、本当に怖いのは、40代、50代での『老前破産』なのです」

 

こう語るのは、『老前破産ー年金支給70歳時代のお金サバイバル』(朝日新書)を出版した、経済ジャーナリストの荻原博子さん。この本で、荻原さんは“普通の人”が借金地獄に陥る現実に触れ、その対策を提示している。

 

結婚して子どもを産み、マイホームを手に入れる。子どもを大学まで進学させ、幸せな老後を送るーー。これまで“人並み”と思われていた人生から転落する人が増えているという。

 

【ケース】教育ローンで老前破産!

 

Bさん(55)は、共働きの妻と3人の子どもの5人家族。夫婦で力を合わせ、郊外にマイホームを購入した。しかしある日、妻が病気で倒れてしまう。妻の看病と子育て、住宅ローンも、Bさん1人で背負うことに。

 

幸い、妻の体調は回復したが、正社員の採用はなく、パート勤めでは以前ほど稼げない。生活費をいくら切り詰めても、3人の子どもが大学に進学するたび、教育ローンが増えていった。特に、末っ子は医学部に進学したため、消費者金融にも手を出してしまった。

 

膨れ上がった借金をどうすることもできず、Bさんは自己破産。取り立てに追われることはなくなったが、マイホームを手放し、家族はバラバラ、子どもたちには奨学金返済が残っている。

 

「もう一度、家族そろって暮らしたい」とBさんは力なく語った……。

 

そんな『老前破産』の対策ついて、荻原さんが解説してくれた。

 

「真っ先に取り掛かりたいのが『資産の棚卸し』です。商店などでは、定期的に在庫数を把握し管理する『商品の棚卸し』を行います。これと似たことを家計でも行い、現状を確認するのです」(荻原さん・以下同)

 

資産の棚卸し表には、「貯蓄・投資信託・株式など」、「保険」、「不動産」、「車・宝飾品など」、そして「負債」の項目を作り、金額を記入。このとき、大事なルールが、「現時点での金額、評価額」を記載することだそう。

 

「たとえば保険なら、死亡保障額ではなく、今、解約したら戻ってくる『解約返戻金』を記入。また不動産も、購入価格ではなく、今の評価額を記載します。表ができたら、資産の合計額と負債の合計額を比べてください」

 

ここで、目標を立てる。

 

「一般的なサラリーマンの方は、資産と負債を『50歳でプラスマイナスゼロ』にするのが目標です。これが達成できれば、ほぼ“勝ち組”です。というのも、住宅ローンを返済しつつ、子どもを大学に通わせると、両方で月15万〜20万円ほどかかっているはずです。この負債分をすべて貯蓄に回すと、定年までの10年間で1,800万〜2,400万円ためられるからです」

 

この貯蓄に退職金を加えて老後資金とし、厚生年金が夫婦2人で月20万円ほどあれば、老後はほぼ安心して暮らせる、と荻原さん。

 

「とはいえ50歳での住宅ローン完済は、あくまでも理想です。できない方は、これになるべく近付けるよう、自分なりの目標を立てましょう。たとえば、当初の目標として『55歳までに負債を1,000万円以下にする』、それがクリアできたら『50代のうちにプラスマイナスゼロにする』……などです。最終的に目標にしたいのは、退職金に手を付けることなく、すべての借金を完済することです」

経済ジャーナリスト

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