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かつて高い資産価値を誇っていたはずの不動産も、近年では少子化による「家余り」で売るに売れない「負動産」になるケースが増えているという。「不動産」ならぬ「負動産」とはなんだろう。

 

「一般的に負動産とは、『持っているだけで資産的にマイナスになる不動産』のことを指します。もっともイメージしやすいのは、地方にある戸建ての空き家でしょうか。もともと住んでいた親は亡くなったものの、売却もできず子どもが固定資産税を払い続けているような状態は、負動産の典型例です。また、それに限らず『いまよりも価値が下がっていく不動産』も、大きな枠で負動産に該当すると私は考えています」

 

そう語るのは、負動産問題の専門家で、相続・不動産コンサルタントの藤戸康雄さん。すでに国内にある「所有者不明」の土地は九州の面積を超す広さに達しているが、藤戸さんは「今後はさらに、マンションも含めた負動産が大幅に増加していくでしょう」と警鐘を鳴らす。

 

「すでに都心でも、木が鬱蒼と生い茂った空き家を目にするようになりました。相続争いなどの問題もあるのでしょうが、もし所有者や相続人たちが『場所がいいから、売ろうと思えば高く売れる』と思っているのなら大間違いです。需要自体が減っているなか、不動産業者もいつ空き家状況が解消するかわからない物件より、いま売りに出ている土地や家を優先して扱います。都心でさえすでに『その気になればいつでも売れる』などという時代ではなくなっているのです」

 

地方となればなおさらだ。

 

もはや、不動産はプラスの資産になるどころか、売ることも貸すこともできず、固定資産税などのお金だけがかかっていく「負動産」になりうる時代。そこで藤戸さんが、負動産のリスクを減らす心得を伝授!

 

■相続前に負動産リスクを軽減するために

 

【心得1】親が健在なうちに家族会議を開くべし!

「親が健在なうちに死後のことを話すのははばかれるかもしれませんが、仮に親に何かあってからでは的確な判断ができなくなるため、のちにきょうだい同士が相続でもめる原因に。ましてや認知症になってからでは遺言書の作成も困難になります」(藤戸さん・以下同)

 

一般的に「健康寿命」は男女とも75歳が目安とされているので、いち早く話し合いの場を設けて!

 

【心得2】登記をあげて権利関係者を把握すべし!

自分の実家が親より前の世代から所有されていた場合は、実家の登記簿謄本を調べて権利関係者を把握しておこう。

 

「父親が祖父から実家を譲り受けていたけれど、名義は祖父のままだった、ということは珍しくありません。すると、相続人は父のきょうだいやその子に及ぶこともあり、全部で20人も! ということも」

 

スムーズな相続のためにも、まずは管轄の法務局で登記簿謄本を取得しよう。

 

【心得3】隣家との境界や建物の現況を調べるべし!

とくに実家が過疎地の空き家という場合、もっとも有効な対策となるのがお隣さんの存在。

 

「たとえ無料でも土地を引き取ってもらったほうが、税金や維持管理費から解放されることになります。ただし、反対側にも家がある場合は、境界線を確定させないと思わぬトラブルのもとに。ほかにも、シロアリに食われていないかなど物理的な確認もしておきましょう」

 

測量、調査は土地家屋調査士へ。

 

【心得4】相続放棄の可能性も視野に入れておくべし!

「後々の面倒を避けたければ、不動産を含むすべての相続財産を放棄してしまうというのもひとつの手です。マンションなら、その後の管理責任は管理組合に移行されるのが通常です。戸建ての場合は家庭裁判所に相続財産管理人選任の申し立てを行う必要があり、かつ100万円程度の『予納金』が発生する場合もありますが、負動産を管理し続ける手間とコストを考えれば、十分に検討の余地はあるでしょう」

 

■相続後の“負け幅”を小さくするために

 

【心得5】民泊での活用を検討してみるべし!

訪日外国人が訪れるエリアに実家があるという人は、「民泊」で固定資産税や公共料金ぶんを賄うという選択も。

 

「民泊とは旅行者が一般の民家に宿泊することや、そのサービスの通称です。海外からの旅行者の宿泊需要を満たす必要性が高く評価され、昨年には『住宅宿泊事業法(民泊新法)』が施行されました。都道府県知事への届け出や、専門業者への委託などが必要ですが、検討してみては」

 

【心得6】DIY賃貸で借り手のハードルを下げるべし!

DIY賃貸とは、借り主が費用を負担することで自分好みの内装工事を施して入居する賃貸物件のこと。

 

「誰も住まなくなった空き家をリフォームして賃貸にするには高額な費用がかかりますが、DIY賃貸ならその必要はありません。また、自ら内装を手がけて借りるくらいの借り主ですから家賃滞納のリスクも低くなります」

 

相続絡みの紛争で塩漬けになっている都心の空き家などにはもってこいだ。

 

「何より優先してほしいのは、実家の所有者である親が元気なうちの家族会議です。仮に、実家が明らかな負動産なのであれば、相続人全員で相続を放棄するという選択肢もありえるでしょう。もっとも、戸建ては相続放棄をしても管理責任から逃れるためには相続財産管理人選任の申し立てが必要です。その費用として高額な予納金が発生することもありますが、少なくとも固定資産税や維持管理費を支払い続ける義務からは解放されます。また、親に多少の現金があるのなら、葬儀費用を除いたお金で一時払いの生命保険に加入してもらっておくというのもひとつの手段です。相続放棄をしていても保険金は受け取れますので、そのなかから予納金を工面することができますから」

 

ほかにも、実家の名義人である父親が亡くなったときに、母親がそのまま家を相続するのか、それとも売却して現金化するのかなど、込み入った話をするのであれば、少しでも親が若いに越したことはない。

 

「さらに、父親が亡くなった後、高齢になった母親が認知症になってしまえば成年後見人をつけなければいけなくなり、相続問題はより難航します。そのためにも、親が元気なうちに合意しておくことが大切なのです」

 

こうした家族会議と並行して、権利関係者や物件の現況をしっかり把握しておくことも忘れずに。隣家との境界線が曖昧だったり、建物自体がシロアリの被害に遭っていたりすれば、負動産の“負け幅”が想定以上に広がりかねないからだ。

 

すでに親が亡くなり負動産を相続してしまった人も、負動産のリスクを減らす心得を参考に“負け幅”を小さくする方法を検討してほしい。「列島総負動産時代」はすぐそこ。早めの備えで、負け戦から逃げ切ろう!

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