■申請を怠らずに制度をフル活用したい

 

介護が必要となる瞬間は突然訪れるもの。だからこそ“心の準備”が欠かせない。いまは介護に関わっていない人でも知っておくべきポイントを教えてもらった。

 

「高齢の親の様子が『おかしい』と思ったら、親が住む地域にある自治体の『地域包括支援センター』に相談しましょう。親の状況をきちんと伝えることで、専門家の視点から対応策を幅広く提案してくれます」

 

いざ介護が必要となったら、要介護認定の申請をすることになる。

 

「市区町村の調査員が自宅を訪問し、介護の必要度がどれくらいかを調査します。このときは仕事を休んでも立ち会いたいです。介護休暇の制度を活用しましょう。条件を満たせば、パート勤めの人でも当日の申請で取得できます。親は他人の前だと張り切って元気な様子を見せようとしてしまいがちですが、そうすると正しい認定がもらえません。親のプライドも大切に、親の現状のメモを手渡すなどして、ありのままを伝えましょう」

 

要介護度の認定を受けたら、ケアマネジャーに相談して介護のケアプランを作成してもらう。

 

「要介護度と所得に応じて使えるサービスの上限額があるので、その中で必要なサービスを組み合わせてもらいましょう。介護は“オーダーメイド”です」

 

多くの人にとって有用となりうる制度・サービスをまとめたものが図の表だ。

 

「医療費が一定額を超えたときに戻ってくる、いわば“過払い金”のような高額療養費制度もあります。ただし、これらの制度には申請が必要。経済的な負担を軽くするためにも、申請についてもケアマネジャーなどプロに相談を。自治体から届く要介護者への通知も見落とさないよう注意しましょう」

 

やはり大きな問題となるのがお金に関すること。いきなり切り出すのは気が引けるかもしれないが、親・家族が元気なうちに話し合っておくことが大切だ。

 

「共倒れにならないよう、親が使える介護保険の上限を考慮して、ケアマネジャーに適切なプランを組み立ててもらいましょう」

 

今後は介護福祉士の資格取得を目指すと語る安藤さん。目指す先にある景色とはーー。

 

「マイナスイメージのある介護の先入観が取り払われ、複雑と思われがちな制度が広く活用されて、介護を取り巻く空気が『みんなでやっていこう!』というふうになってくれたらうれしいですね」

 

けっして人ごとではない介護の問題。いざその場面を迎えたときに慌てることのないよう備えておくことが、介護される・する側双方にとってのメリットとなるのだ。

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