「生活費が下ろせない…」だけじゃない認知症で資産凍結 少なくとも年24万円かかる!
画像を見る 通帳にいくら数字が並んでいても、認知症になってしまえば自由にはならない(写真:アフロ)

 

■契約書は司法書士など専門家に相談しよう

 

では、「家族信託」は、どのように手続きを進めたらいいのか。明石さんに教えてもらった。

 

【1】専門家に相談する

 

家族信託の仕組みとメリット・デメリットを理解したうえで、自分たちが相談したい内容をまとめておこう。きょうだいが全員そろって意見がまとまると、後からトラブルを防ぐことができる。

 

「契約書を家族が作成することは否定されていません。そのほうが費用はかからないと思うかもしれませんが、自己流で作成した契約書では、不備があると使えない契約書になります。中立な立場でアドバイスをしてくれる専門家にお願いしたほうがスムーズに手続きが進みます」

 

【2】信託契約の内容を決める

 

専門家が作成したたたき台「提案書」をもとに、疑問点をクリアしていこう。

 

「図のケースでは母が委託者で、受益者、娘が受託者になります。

 

母名義の実家と現金(専用口座で管理)の一部を信託財産にします。母の判断能力が低下したら受託者である娘が実家の売却等を行えるので、売却益を介護施設等の入居費用にあてることができます。

 

また、家族信託にした現金の一部から、固定資産税などの費用の支払いもできます。さらに毎月、一定額の金額を生活費として母に渡すこともできます」

 

提案書の内容をもとに作成された「信託契約書」を確認しながら、準備を進めていく。

 

【3】公証役場で信託契約書を締結する

 

「信託契約書」を法的に有効なものにするため、公証役場に専門家と行き、公正証書にする。費用は信託財産の額にもよるが3万〜10万円程度。書面に署名と捺印をするので、必要なものは事前に確認しておくと手続きはスムーズにいく。

 

【4】信託財産の手続きをする

 

信託する現金は、金融機関で「信託口口座」を開設して入金するなどの手続きをする。

 

信託財産が自宅など不動産の場合には、司法書士に信託不動産の登記をしてもらう必要があるので、報酬と登録免許税がかかる。

 

契約が完了したら「家族信託」がスタート。

 

「注意点はいくつかあります。認知症になった親が施設に入居する場合、受託者である子どもが親の代理人として入居契約をすることができません。また、信託財産は相続財産ではなくなるため、親が亡くなったら信託契約の内容に従って処理されます。信託財産と相続財産の割合や内容によっては、家族間でトラブルにもなりかねないので、『遺言書』も同時に作成し、信託契約書の内容を決めたほうがいいでしょう」

 

長い介護生活になった場合でもラクに過ごすために、早めに親子間で話し合っておこう。

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