■義父の「請求漏れ年金」が苦しい家計の救世主に
美子さん(48、仮名)は、結婚前、夫の勝さん(51、仮名)から「子供のころ、事情があって父は家を出た」と聞いていた。そして結婚してまもなく、義父の死亡通知が届いた。享年67。生前、会社勤めをしていたこともわかった。
「今年1月、美子さんから『義父は企業に勤めていたので、(厚生)年金を何かもらうことはできないでしょうか?』と手紙をいただきました。勤務先の企業名もはっきりしていたので、厚生年金約20年分はすぐに見つかったんです」
義父の厚生年金加入期間は241カ月だった。
「一時的にでも年金を支払っていれば、『いくらか貰える』と誤解されている人もいますが、年金は国民年金の保険料を受給資格が発生する240カ月分支払うことで、はじめて支給の対象になります」
ようやく見つけ出しても、加入期間240カ月に数カ月足りなくて貰えないこともあるという。美子さんのケースではなんとか条件を満たしていた。そのため、厚生年金20年分と、離れて暮らしていた義母への遺族年金、合わせて約1千万円を受け取ることができた。
「美子さんには2人のお子さんがいて、上の子は都内の大学に通っていて、下の子はちょうど大学へ入学するタイミングでした。
『家計が苦しいときに、亡くなった義父からプレゼントを貰えたようでした。また、それまで義父の話をいっさいしなかった夫が、最近では思い出話をするようになって』と、喜んでもらえました」
時を超えて、離れて暮らした義父から子と孫への贈り物となった。
「繰り返しになりますが、年金は、受給者が申請しないと受け取ることができません。
消えた年金は、自分で探し出して申請するしかないのです。『請求漏れ年金』を受け取った方からの『ありがとう』が私の喜びです」
あなたの身近なところにも、申請せずに損をしている年金があるかもしれない。年末年始、実家で祖父母や両親の年金に「貰いそびれ」がないか確認してみてはいかがだろう。
【解説してくれたのは…】
柴田友都さん
しばたゆういち・年金コンサルタント。社会保険労務士。1948年生まれ。金融機関に勤務するなか、請求漏れ年金の相談キャンペーンを企画。退職後、産友社会保険労務士事務所を開設。「消えた年金」の相談に従事。調査費用は無料で、見つかった場合は年金額の20%と手数料を受け取る。これまで6千件以上の請求漏れ年金を見つけ出し「年金探偵」と呼ばれている。