クマが人を襲う被害が、全国で相次いでいる。8月3日、山梨県身延町の住宅敷地内で、75歳の女性がクマに襲われ、顔や脚に大けがを負った。同月中旬には、北海道の羅臼岳を登山中だった26歳の男性がクマに襲われ死亡。被害は東京都内にも及んでおり、23日には、東京都奥多摩町で渓流釣りをしていた50代の男性が、子グマに顔を引っかかれて負傷している。
「2023年度のクマによる人身被害の件数は198件(被害者数219人・死亡者数6人)と、環境省の統計開始以来、過去最多を記録。今年度は7月末時点で、すでに被害者数は55人(うち3人が死亡)。2023年と同水準か、より高いペースで被害が増えています」(全国紙記者)
なぜ、これほどクマによる人身被害が増えているのか。東京農業大学教授で、日本におけるクマ研究の第一人者でもある山﨑晃司さんはこう解説する。
「かつて集落周辺の里山は、木々が伐採されて耕作や林業に利用されていました。しかし近年は、そうした利用が減少して里山に木々が増えたことや、集落の人口減少によって、野生動物が近づきやすくなっていることなどが一因です」
つまり、人と野生動物の生活圏の境界が失われつつあるわけだ。こうした状況のなか、気がかりなのが、秋のお彼岸の墓参りだ。
「場所にもよりますが、墓地周辺には、クマが好む柿や栗の木などが植わっていることも多く、なおかつ9月以降は、クマが冬眠に向けてエサを探し始める時期と重なります」(前出・山﨑さん)
実際に過去最悪の被害を記録した2023年も9月から人身被害者数が急増。そして、墓地でのクマ出没情報は、これまで各地で報告されている。
「昨年8月には、神奈川県伊勢原市の霊園で、墓参り中の夫婦が15mほど先で木の葉っぱをむしゃむしゃ食べるクマと遭遇しています。また、昨年5月にも広島県廿日市市の正覚院で、墓地内を歩きまわる体長約1mのツキノワグマが、防犯カメラに映り話題になりました」(前出・全国紙記者)
いずれのケースも人身被害には至らなかったが、一歩間違えれば大惨事になりかねないため、秋の墓参りに向けて注意喚起する自治体が増えている。
