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(写真・神奈川新聞社)

川崎市川崎区の多摩川河川敷で昨年2月、市立中学1年の男子生徒=当時(13)=が殺害された事件で、殺人と傷害の罪に問われたリーダー格の無職少年(19)の裁判員裁判が2日、横浜地裁(近藤宏子裁判長)で始まる。計3人が起訴された事件で初めての裁判となり、少年は起訴内容を認める見通し。13歳の命はなぜ奪われたのか-。SOSを受け止められず、教育現場の対応も問われた事件。主導したとされる少年の裁判で、真相解明が求められる。

 

起訴状によると、リーダー格の少年は昨年1月17日午前2時ごろから約30分間、横浜市港北区の駐車場で男子生徒の顔面を殴るなどしてけがを負わせた。また2月20日午前2時ごろ、18歳の少年2人=ともに傷害致死罪で起訴=と共謀し、多摩川河川敷で男子生徒の首をカッターナイフで多数回突き刺して殺害した、とされる。

 

捜査関係者によると、横浜市内でリーダー格の少年が男子生徒に暴行を加えたとされる後、男子生徒の友人らが暴行に抗議して少年に謝罪させたという。

 

昨年5月の横浜家裁の少年審判の決定は、この暴行が殺害の伏線になったと指摘。家裁はリーダー格の少年について「事件に終始主導的に関わった」、ほかの2人は「凶器となったカッターナイフを提供した」、「被害者を呼び出した」などと認定している。

 

2日に始まる裁判は3日連続で開かれ、4日に結審する。犯罪事実に加え、少年の成育環境などの情状面を踏まえ、裁判員らがどのような判断を下すかが焦点となる。判決期日はまだ指定されていない。

 

裁判に情状証人として出廷する予定のリーダー格の少年の父親は1月下旬、「(息子には)ありのままを話してほしい」と話した。

 

◇短期間で状況暗転

学校や同級生らによると、男子生徒は5歳から島根県の人口3千人余りの離島・西ノ島で育ち、小学6年の夏に川崎市に転居。事件は、中学1年の冬休み明けから学校に通わなくなった中で起きた。

 

捜査関係者によると、男子生徒がリーダー格の少年から横浜市内で暴行を受けたとされるのは、親しくなってから1カ月ほどのこと。多摩川の河川敷で遺体が見つかったのは、その約1カ月後で、男子生徒の状況は、わずかな期間で命を落とすまでに暗転したことになる。

 

事件を受け、川崎市が昨年8月に公表した報告書は、「学校が男子生徒の状況を十分に把握できなかった」「突然登校しなくなった時点で危機感を高め、組織的な支援体制をとって状況をくみ取るべきだった」などと指摘。関係機関との連携強化といった再発防止策をまとめており、裁判では非行に向き合う行政や教育機関、地域の役割にも関心が集まる。

 

「小さくておとなしく、かわいい感じの子だった」。かつて公園で遊んでいた男子生徒を知る男性(73)はこう振り返る。一人一人の少年は「いい子」だが、人数が増えると(素行が)悪くなることがあるといい、「自分も注意をしてきたつもりだったのだが、守れなかったという思い。なぜ事件が起きたのか、(リーダー格の少年の)本人の口から聞きたい」と話した。

 

◇背景把握、再発防止を 喜多明人・早稲田大学教授(教育法学・子ども支援学)の話

厳罰はあくまで対症療法で、なぜ非行行為に走ってしまったのかしっかりと原因を把握することが大前提。裁判では原因や家庭環境、生い立ちなどの背景をしっかりと把握し、再発防止につなげてもらいたい。

 

また、川崎市は子どもの権利侵害の相談・救済機関「人権オンブズパーソン」の設置や、スクールソーシャルワーカー(SSW)の配置など、支援体制は先進的な地域だった。SSWなどと連携ができていれば事件は防げた可能性があるが、できていなかった。

 

全国的に学校は限界を超えていながら問題を校内に抱え込む体質がある。地域や学校外と協力関係をつくり、学校は子どもたちを自分たちの目の届く範囲にとどめさせる努力をしてほしい。裁判で明らかになることも踏まえ、教育現場は教訓としてもらいたい。

 

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