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(写真・神奈川新聞社)

川崎市の市立中学1年男子生徒殺害事件で、殺人と傷害の罪に問われた無職少年(19)の裁判員裁判の第3回公判が4日、横浜地裁(近藤宏子裁判長)で開かれた。検察側は「犯行は残虐で、少年は主犯格として最も重い責任を負うべき」とし、懲役10年以上15年以下の不定期刑を求刑。弁護側は「少年は反省しており、矯正は可能」と、懲役5年以上10年以下を求め結審した。判決は10日。

 

検察側は論告で、殺害された男子生徒の遺体には43カ所の切り傷が存在したとし、「無抵抗の13歳を年長者3人が一方的にカッターナイフで切り付け、むごいの一言に尽きる」と指摘。真冬の川を泳がせ、全裸の状態で立ち去ったことを「哀れみなど人間的な感情がない犯行だ」と非難した。

 

事件につながった経緯は「筋違いの逆恨みで、保身のために殺意を抱いた」とした上で、涙を浮かべて許しを求めた男子生徒が感じた恐怖や苦痛は「言葉で表せない」と強調した。

 

2014年の少年法改正で不定期刑の上限は15年に引き上げられており、検察側は「少年事件でも特に残虐性が高く、改正後の上限をもって臨むべき」とした。被害者参加制度を使って求刑した遺族は、無期懲役を求めた。

 

一方、弁護側は、事件の背景として親から体罰を伴うしつけを受けるなど、少年は暴力以外の解決方法を知らなかったと説明。事件自体は交友関係のトラブルが要因で「必ず殺してやるという強い殺意はなかった」と指摘した。ほかの少年からカッターナイフが提供されるなど偶然の出来事があったほか、仲間の加勢で引くに引けなくなり、「一人ではなしえない犯罪だった」と訴えた。

 

この日は少年の両親の証人尋問や遺族の意見陳述も行われ、男子生徒の母親は「言いたいことはひとつ。息子を返してほしいです」と声を詰まらせた。少年は最終意見陳述で「男子生徒の家族の話を聞いてどう答えていいか分からなかった。本当にすいません」と述べた。

 

起訴状によると、少年は昨年1月、横浜市内で男子生徒の顔面を殴り全治2週間のけがを負わせた。翌2月、知人で18歳の少年2人=いずれも傷害致死罪で起訴=と共謀し、多摩川河川敷で男子生徒の首をカッターナイフで複数回切るなどして殺害した、とされる。

 

◆不定期刑 少年法52条の規定。「懲役10年以上15年以下」のように短期と長期の刑期を示し、幅を持たせる量刑のこと。2014年の少年法改正で短期は最長5年から10年に、長期は同10年から15年に、それぞれ厳罰化された。

 

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