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(写真・神奈川新聞社)

原爆投下から71年、オバマ米大統領が27日、米国の現職大統領として初めて被爆地・広島を訪れる。核なき世界への第一歩として被爆者らの期待が高まる中、県内の米国籍住民はさまざまな思いで歴史的瞬間を待っている。米国社会では「原爆投下への謝罪の必要はない」との意見が多数派だが、長い日本生活を通じて母国とは異なる視点も持つようになった人も多い。大統領の謝罪を求める声への理解も生まれている。

「米国では学校で『原爆投下が第2次大戦を終わらせた』と習う」。自身もそうした教育を受けていた横須賀市の牧師、レイ・マーサーさん(52)は、来日後に広島の平和記念資料館を訪れたことがある。「被爆地の惨状を、その時初めて知った」

教会には多くの国籍を持つ人々が集う。「第2次大戦での加害国の人たちが、被害国の人たちに個人として謝る場面もあった。その時は皆が涙を流した。前世代のしたことでも『I’m sorry』という言葉は人の心を癒やせる」

「日本人も、日本にいる米国人もすべて、一度は被爆地に足を運ぶべき」。かつて厚木基地(大和、綾瀬市)や横須賀基地(横須賀市)に勤務した退役米軍人の男性は、そう考えるようになった。

兵器に関わる任務の経験が長かった。長崎の原爆資料館を訪れた際に原爆の威力を示す展示を目にして「衝撃を受けた」。

中東の戦地も知っており、「さまざまな国の主張があるが、施政者は大局を見なければいけない」。被爆地でオバマ大統領が謝罪をするとしても反対はしないという。

第2次大戦中の日本への攻撃は「真珠湾の報復」-。地元の米国人にそんな認識が強いことも、ハワイ出身の英語講師の女性(61)=葉山町=は知っている。

訪れた広島平和記念資料館では、展示内容が語る惨状に涙が流れた。「世界のどの国でも二度と起こしてはいけない」と感じた。

一方で、世界の安全保障環境に「強い軍事力を持つべきだ」とも思っている。一国の代表者が謝罪すべきかどうか、自分の中で答えは出ていない。「日米連携のためにすべきことが謝罪なら、すればいいと思う」

■被爆者ら期待と抗議
「一歩前進だ」「謝罪がなく、何のための訪問なのか」。オバマ米大統領の広島入り前日の26日、被爆者や市民の間には、核保有国トップの被爆地訪問で核廃絶への歩みが進むとの期待が膨らんだ一方、抗議の声も上がった。

広島県原爆被害者団体協議会(佐久間邦彦理事長)の大越和郎事務局長(76)は「原爆資料館を見て、核兵器の非人道性を少しでも理解するのは意義がある」と評価する一方、「今後の行動にどう生きるのか注目したい」と指摘。もう一つの県被団協(坪井直理事長)の箕牧智之副理事長(74)は「資料館の見学、慰霊碑への献花、被爆者との面会の三つは必須項目だ」と語った。

原爆ドーム前にはオバマ氏の訪問に反対する約50人が集まり「謝罪もないのに、何のために来るのか」「核兵器を持った米大統領は広島に来るな」と訴えた。

広島市中区の平和記念公園にはいつものように多くの外国人や観光客が訪れ、慰霊碑に向かって黙とうしていた。修学旅行で児童を引率してきた、兵庫県豊岡市の市立小の校長辻井明未さん(59)は「子どもたちには、戦争は絶対にしてはいけないと伝えている。オバマさんは広島の惨禍を世界に発信してほしい」と話した。